Mobile-Cash-Withdraw, 2012 画像:NCR
銀行ATMの行列に何十分も並んでいる方に良いニュースだ。
金融・流通系システム開発会社のNCRは、ATMにスマホをかざすと数秒でお金をおろせるシステム「モバイル・キャッシュ・ウィズドロー」を開発、現在インド銀行で導入している。あらかじめアプリでおろしたい金額を入力しておく必要はあるが、お金の出し入れがまるでETCのようにスムーズになるという。
NCR日本法人の日本NCRでは、東京オリンピックが開催される2020年に向け、ATMのシステム革新を進めている。ICカードの仕様(EMV仕様)が海外と異なるATM環境を国際基準に合わせるとともに、マシンの近代化を進めていく。同じ流れでスマホ対応のATMが導入される可能性もあるそうだ。
「お客さんは待つのが嫌だし、カードのスキミングも問題です」と、日本NCRの大串政弘副社長は言う。
オムニチャネルは「セルフ」を発展させる
流通のみならず、金融業界でもモバイル店舗と実店舗のオムニチャネル化が進むのはなぜなのか。
「やはり、特別なお客さんを早く知りたいというニーズがあります」
銀行であれば、預金がたっぷりある優良顧客は5分と待たせず窓口に案内し、保険や信託商品を営業したい。百貨店であれば、シーズンごとに必ず買い物をしている上客が入ってきたら、すぐにフロアマネージャーを飛んで行かせたい。そんな顧客との情報窓口をオムニチャネルが担うことになるという。
Walmart App
「優秀な販売員なら頭に入っているかもしれませんが、ある程度サービスを均質化したいというんですね」
コンピューターに販売員の代わりをさせたいというニーズもある。
ウォルマートで試験導入中の「スキャン・アンド・ゴー」というソリューションはスマホをPOSレジの代わりにできる、セルフレジの進化系。客がスマホでバーコードをスキャンしたとき、お薦め商品を紹介できるというのだ。
「レコメンドすると売り上げが上がる。店員がいなくても同じようなことができると」
オムニチャネルは「使わない理由」をつぶす鍵にもなりうる。「時間がかかる」「面倒くさい」が減り、利用を増やすきっかけになるかもしれない。かつて無人化(セルフ化)も同じだったと大串副社長は言う。
「ATMが最初に使われはじめたのは、消費者ローンの借金を返すとき窓口の係員に見られたくないという理由だったといわれています。セルフレジ(無人レジ)にしても、セールで10円引き、100円引きになった食品を買っているところをパートさんに見られたくないという理由で使われているとか」
セルフ化によって24時間化が進む店舗を、さらに近代化するオムニチャネル技術。これからは同じ24時間営業でも「ネットと同じくらい速い」「ネットと同じくらい便利」というコピーがつくことになりそうだ。