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イスラエルITいろはにほへと 第16回

世界初を生み出したベンチャーが世界展開できる理由

2015年01月30日 10時00分更新

文● 加藤スティーブ(ISRATECH)

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Autotalksのサイトより

 本連載第14回でご紹介したAutotalks。前回はAutotalksが持っている近未来の自動運転、運転支援を支える車車間、路車間通信用の技術についてご紹介したが、本稿では、同社が世界展開を支えるメンバーに焦点をあてる。

 このAutotalksであるが、半導体業界を知り尽くした創業メンバーで構成される。3氏とも、シリコンバレーの半導体業界にも顔が広く、PMC-Sierraでの経験により、半導体ビジネスの進め方を熟知している。

 CEOで共同創業者のNir Sasson氏。同氏は、TIのR&Dの研究開発経験を持つ。CTOで共同創業者のOnn Haran氏は、同社へ参加する以前は、TIを経て、PassaveのCTOを務めていた。(同社は、PMC-Sierraに2006年に3億ドルで買収。) R&DのNo.2が、Amos Freund氏である。同氏は「CRATON」と「PLUTON」の2つのチップセットの開発者。それ以前は、PassaveとPMC-Sierraにて、FTTH向けのチップセットのVLSIのリーダーを務めた経験を持つ。

 本連載の第7回「半導体ビジネスを成功させる5つの鍵」で、メガチップスの相澤氏よりご紹介いただいた5つのうち、(1)〜(4)を備えているチームである。


  1. 国際標準化団体で仕様策定をリードし、自らの仕様を最大限入れ込み、かつタイムリーにまとめ上げる能力
  2.  ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)の世界会議への参加。日本進出時にも、まず、自動車の標準化団体へアプローチをかけて、同市場へ展開を試みる等業界の事情を熟知し、戦略的に動いている。

  3. チップベンダーから最終顧客までのサプライチェーンを構成するメイン企業への強いコネクション
  4.  このAutotalksが1番強い点は、このコネクション。というよりも、「コネクションを活用し、協業をまとめ上げる能力」が長けており、日本のベンチャーでは、ほとんど見られない点だろう。今年に入り、半導体大手、Infinion Technologies(独)(2014年5月)、ST MicroElectronics社(仏・伊)(2014年11月)と相次いで提携を発表している。

     フランスのルノーと欧州で、共同プロジェクトを立ち上げるほか、社名は明かせないが、ドイツの車メーカーとも共同プロジェクトを立ち上げる予定である。

     また、デトロイトで2014年9月に開催されたITSの世界会議にて、世界各国のアンテナメーカーともすでに協業関係を結んでいることを発表した。協業先は、Commsignia(ハンガリー)、 Continental/Kathrein、Ficosa(スペイン)、INFAC Elecs(韓国)、Laird(米国)、LGイノテック(韓国)、Mando(韓国)等である。

     半導体メーカーだけでなく、「自動車」「アンテナ」とまさに、サプライチェーンを構成するメーカーへ見事に展開を始めている。

  5. 資金調達力
  6.  会社設立の翌年2009年に、複数のVCから、Seed投資で、5.5m$を調達、その後2回の増資を行っている。(増資額は、公開されていない)

  7. 事業を成功に導くのに十分なタレントとチーム
  8.  こちらについては、冒頭に述べたとおりである。



 本連載第12回で「イスラエル発、世界シェア80%の高度運転支援システム」にてご紹介したモービルアイに続き、Autotalksが世界展開するのにそれほど時間は多くかからないだろう。


筆者紹介──加藤スティーブ


著者近影

イスラエルの尖った技術に着目して、2006年にイスラエル初訪問。2009年にISRATECHを設立し、毎月40~60社のスタートアップが生まれるイスラエル企業の情報を日本へ発信し続ける。2012年にはイスラエル国内にも拠点を設立。イスラエルのイノベーションを日本へ取り込むための活動に着手する。ダイヤモンドオンラインにて「サムスンは既に10年前に進出! 発明大国イスラエルの頭脳を生かせ」を連載。


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