このページの本文へ

マネージドクラウド「HANA Enterprise Cloud」の提供拠点

SAP、東京/大阪にアジア地域初のHANAデータセンター開設

2014年04月08日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 ドイツSAPとSAPジャパンは4月7日、同社としては4カ国目、アジア太平洋地域では初のSAP HANAデータセンターを、東京と大阪の2都市に開設し、4月1日より稼働した。日本だけでなく、アジア太平洋地域全体への「SAP HANA Enterprise Cloud」サービスの提供拠点となる。

 SAP HANA Enterprise Cloudは、HANAプラットフォームに対応した基幹業務システム「SAP Business Suite」や「SAP NetWeaver Business Warehouse」のほか、HANAで強化された新しいアプリケーションをマネージドクラウドサービスとして提供する。

 日本のデータセンターでも、これまでドイツやオランダ、米国のデータセンターで提供してきたのと同等のサービスレベル、セキュリティ、安全性に基づきサービスを提供する。なお、東京、大阪の2カ所にデータセンターを開設したことで、国外のデータセンターを利用することなく日本国内だけでDR(災害対策)が可能。

日本のデータセンターにおいても、24×7のサポート、ソリューションスタック全体をカバーする99.7%の可用性でサービスを提供する

 同日の発表会に出席したSAPジャパン 代表取締役社長の安斎富太郎氏は、「大規模な基幹系システムをインメモリで、しかもクラウドで提供するのはSAPだけ」と同社クラウドサービスの優位性を強調し、これを新設の東京/大阪データセンターでも実現することができるようになったと述べた。

SAPジャパン 代表取締役社長の安斎富太郎氏。「日本でのデータセンター稼働が発表できて、今日はうれしい日になった」

 またSAPでは、新たなデータセンターを自社のサービス提供拠点としてだけでなく、パートナーエコシステムを拡大するためのデータセンターとしても位置づけている。 HANA Enterprise Cloudに関する構築、運用のノウハウや、既存のオンプレミス環境からの移行プロセスなどをパートナーにもオープンにし、パートナーが独自のデータセンターから同クラウドサービスを提供できるように支援していくと述べている。

 安斎氏によれば、同社のパートナービジネスは「昨年だけでも25%、この3年間で見ると4割以上も伸びて」おり、今後もオープンな姿勢でパートナーとの協業を進めていく姿勢は変わらないと強調した。「SAPが具現化したベストプラクティスを、パートナーに提供していく。HANAをプラットフォームとしたクラウドを、SAPだけではなく、パートナーと一緒に提供していく」(同氏)。

 パートナーとの関係について、SAP自身がサービスを提供することで競合が生じるのではないかとの質問が出たが、「現在の市場規模、市場拡大のスピードを考えると、1社ですべての業種/規模の顧客にサービスを提供するのは難しい。当面は、良いサービスをいち早く顧客に届けるための、パートナーとの“協業”フェーズだ」と安斎氏は答えた。

安斎氏が示した、HANAデータセンターの国内開設の意義

 発表会にはSAP本社から、エグゼクティブ・ボード・メンバー プロダクト&イノベーション担当のビシャル・シッカ(Dr. Vishal Sikka)氏、CIO兼エグゼクティブ・バイスプレジデント クラウド&デリバリー担当のビヨン・ゲルケ(Bjorn Goerke)氏も出席し、同社のグローバルなクラウド戦略において、日本のデータセンターがアジア太平洋地域の成長の鍵を握ることを繰り返し強調した。

SAP エグゼクティブ・ボード・メンバー プロダクト&イノベーション担当、ビシャル・シッカ氏

SAP CIO兼エグゼクティブ・バイスプレジデント クラウド&デリバリー担当、ビヨン・ゲルケ氏

 シッカ氏は、アジアで最初のデータセンターの設置国として日本を選んだ理由について、市場の成長可能性と成熟度を考えたと述べた。「日本は、アジアにおける企業のデジタルトレードのための“ハブ”となると考えた」(同氏)。また安斎氏は、顧客が要求するサービス品質の高い日本市場からスタートすることで、グローバルでも通用するサービスとして鍛えられるのではないかとの見方を示した。

 安斎氏は、SAPジャパンとしての今後の国内クラウド戦略について、次のように語った。

 「HANAの場合、たとえばこれまで2重化していたデータベースを単一にできるなど、単にオンプレミスのものをクラウドに載せるだけでなく、システムそのものの構造変革を引き起こす。そうした(単なるクラウドとHANAクラウドの)差別化のポイントを打ち出して、これまで以上に“クラウドカンパニー”へと変化していきたい」(安斎氏)

 安斎氏は今後、プライシングにおける施策なども含め、顧客のオンプレミスからクラウドへの移行を積極的に支援していく姿勢を強調した。

■関連サイト

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード