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半導体の「商人」が「王者」を追いつめた

パソコン売れず、インテル崖っぷち

2014年04月17日 16時00分更新

盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

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半導体の王者Intelが追いつめられた、という声がある。

本サイトの記事「XP駆け込み需要も焼け石に水」で書いてあるとおり、2014年1~3月期のパソコン出荷台数は7342万台で前年同期比4.4%マイナス。2013年の出荷台数は3億台にとどまった(ともに米IDC調べ)。IntelのPCクライアント部門は2010年から3年連続で減益となっている。

逆にスマートフォンやタブレットなどのモバイルは好調だ。出荷台数は2014年内にスマートフォンが10億台を超え、2017年にはタブレットが5億台にのぼるという予測もある(矢野経済研究所、米NPD DisplaySearch調べ)。モバイルで伸びているのはIntelではなく英ARMの半導体だ。


ARMはスマートフォンの武器商人

ARMは売上高こそIntelの5兆円に対して1200億円と50倍近い差をつけられているが、スマートフォンで9割のシェアを持つ。ARM半導体の流通個数は、Intelの数億個に対して数百億個と逆に100倍近くの差をつけている。最新スマートフォンには1台あたり8~10個のARM半導体が使われていることもある。

両者の違いはビジネスモデルだ。Intelは1拠点あたり約3000億円といわれる工場を複数抱えている垂直統合型。対するARMは工場を持たずに半導体のライセンス(設計図)だけを売る水平分業型。Intelが半導体メーカーに君臨する王者とすれば、ARMは王者以外の半導体メーカー相手に武器を売る商人だ。

なぜARMが勝てたか。もともとARMの得意分野は組み込み半導体。CPUだけでなくメモリーやストレージのコントローラーのように商品ジャンルが幅広く、製造にかかる制限が緩かったためだ。

CPUとしての性能はIntelが上でも、CPUの製造はIntelの専売特許で、カスタマイズのしやすさはARMが有利。開発環境も整っているためスマホを製造するメーカーも扱いやすい。さらにARMライセンスを採用する半導体メーカーが増えるほど半導体の価格は下がり、市場競争力も増す仕組みになっている。

しかし、ハイテク業界に詳しい後藤弘茂氏によれば「モバイルの戦いは既に終わっている」という。


CPU戦争はスマートフォンからIoTへ

もともと機能を削ぎ落とすのがコンセプトのスマートフォンは、先進国ではすでに需要が頭打ち。ウェブ事業者がサービス競争に明け暮れる背後で、半導体メーカーは次の買い手を探している。その中で、Ciscoのようなシステム事業者や投資家の目線が向いている先はIoT(Internet of Things)だと後藤氏は言う。

IoTは、ごく一般的な商品に通信機能を持たせようというムーヴメント。極端に言えば、自分の賞味期限をスマホに通知してくるヨーグルトを作るような発想だ。

半導体メーカーからすれば、商品への組み込みがたやすく、通信とちょっとしたデータ処理ができる超微細な半導体を一般企業に売り込める、という話になる。通信はセンサーを超える省エネ・安全性につながるといった惹句をもとに、クルマの世界では通信機能を持ったスマートカーの開発競争が加熱している。

ARMもIoTに向けた取り組みを始め、工業機器や自動車から用途の拡大をはかっている。

ARMは省電力&低コストの半導体を得意とする。昨年10月に開催した「ARM Techcon 2013」では、さらにSDN向けのサーバー半導体にまで手を伸ばし、IoTのサーバー・クライアントの両軸をカバーしていくARMの新たなエコシステムをうたいあげていた。


有利な面もあるIntelだが……

モバイルに続いてIoTまでARMに取られてしまえば、王者Intelの立場はない。

Intelは昨年IoT関連の事業部を立ち上げて、ARMを追いかけはじめた。ARMにとってIoTは組み込み半導体の延長だが、インテルにとってIoTの位置づけはビジネスソリューションに近い。サーバーとクライアントを結んだシステムを、セキュリティーも含めたトータルパッケージとして売っていくことが目的になる。

ことIoTにおいて、Intelの強みはサーバー半導体で持っている9割のシェアだ。Intelのデータセンター事業も3年連続の増益で、PC事業の減益を補う形になっている。

GoogleやFacebookなどがクラウド向けのサーバー半導体を独自に作りはじめているが、今はまだクラウドも登場したばかり。データの分割・複製が難しい、同期に時間をかけられないなど、クラウドの分散技術に向いていない処理もあり、エンタープライズの世界でIntel製の半導体はまだ安定した地位を得ている。

Intelに有利な話としては、IoTの世界では従来とは比べものにならないほど大量のデータを処理する必要がある点。データを人ではなく機械が入力し、送信するためだ。いくらサーバー側で処理できるといっても、クライアント側でデータ量を減らさなければ、ネットワークがパンクしてしまう。

そこでIntelは、複数のクライアントを近接ネットワークでつなぎ、あらかじめデータ処理をさせる方法を提案している。データの差分を抽出してサーバーに送ればネットワークの負荷はわずかで済む。差分検出型システムを構築する際、サーバー半導体とクライアント半導体は同じIntel製が望ましいというわけだ。

では、Intel製の半導体はIoTの世界でスタンダードになれるのか?

しかし関係者への取材から浮かびあがってきたのは、Intelは「時間」という大きな壁にぶつかって崖っぷちに追い込まれている、という実情だ。「アスキークラウド2014年5月号」の特集では、その壁について詳細にまとめている。

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