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ソニーのDSDレコーダー「PCM-D100」を分解してこだわりを解説!

2014年02月17日 12時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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「PCM-D100」

「PCM-D100」

 ソニーが昨年11月に発売し注目を集めたリニアPCMレコーダーの最上位機種「PCM-D100」(実売価格10万円前後)。192kHz/24bitのリニアPCM録音ができるだけではなく2.8MHzのDSD録音にも対応するのが注目を集めた理由だが、その設計のこだわりについて開発担当者の橋本高明氏が説明を行なった。

音質の追及で徹底的にこだわった内部構造

PCM-D100を分解してそのこだわり設計を説明

PCM-D100を分解してそのこだわり設計を説明

メイン基版。案外小さい

メイン基版。案外小さい

左がA/D用。右がD/A用の基板

左がA/D用。右がD/A用の基板

 PCM-D100は、メインの基板のほかに2つの基板が分離する形で搭載されている。D/Aコンバート用の基板とA/Dコンバート用の基板だ。この2つの基板はシャーシで区切られている上、それぞれの信号が干渉しないように、部品の配置を調整し、電源パーツも独立させている。

電源回路に使われている電気2重層コンデンサー

電源回路に使われている電気2重層コンデンサー

 電源回路はDSDとPCMの音の違いがわかるようにするためにも重要な要素だという。そこでPCM-D100には0.33Fという高容量のコンデンサーを採用。0.33Fと言われてもよくわからないが、ビデオカメラのLEDフラッシュを光らせるのに使われるようなパーツだそうだ。内部インピーダンスが非常に低いのも特徴で、曲の余韻などもきれいに表現できるとのことだ。

中央の大きいチップがD/Aコンバーター

中央の大きいチップがD/Aコンバーター

小さくて見えづらいが、赤い矢印の先にあるのが導電性高分子コンデンサー

小さくて見えづらいが、赤い矢印の先にあるのが導電性高分子コンデンサー

 再生できる音源の量子化ビット数は24bitまでなのだが、D/Aコンバーターは32bit処理が可能。処理に余裕を持たせることで24bit音源の実力を出し切ることができるという。また、オペアンプ用電源には「等価直列抵抗」(ESR)が極めて低い導電性高分子コンデンサーを採用することで、ノイズの混入を防止。ローパスフィルターの特性が出せるような構成になっている。

限界を超える大音量の入力でも
音が歪まない工夫

 録音用のA/Dコンバーターは、PCM用とDSD用の2つの回路を搭載。各録音モードに特化することで、録音の音質を高めている。さらに、PCM用としては「デジタルリミッター」用のA/Dコンバーターを搭載し、2つのA/Dコンバーターを使用して録音する。

 デジタルリミッター用A/Dコンバーターは、元の入力レベルに対してマイナス12dbで処理を行なう。そして限界を超えたオーディオレベルの入力により、音が歪んでしまった部分に対してデータを補完。適切なオーディオレベルで記録してくれる。

 このデジタルリミッター自体は従来機種にも搭載されていたが、この機能を応用した「S/N 100dbモード」がPCM-D100の新機能となる(デジタルリミッターとは排他使用)。S/N 100dbモードは内部ノイズを最大限抑え、ノイズの中に埋もれてしまいそうな小さな音もきちっと収録する機能だ。

 仕組みとしては、2つのA/Dコンバーターのうちの一方で通常の処理を、もう一方でオーディオレベルを高めて処理を行なう。その後、DSPの処理により高めたオーディオレベルを元の入力と同等になるように縮小し、元のオーディオレベルで録音した音声と合成して記録する。

 これにより、音が小さい部分は歪まず、かつノイズが低減されるという。橋本氏によれば「ダイナミックレンジが広い音の収録で使うと効率的」とのことだ。

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