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次世代の記録・演算素子の実現にむけて着々と実用化

東北大/NEC、スピントロニクス技術により無線センサの電池寿命を約10倍に延長

2014年02月12日 16時41分更新

文● 行正和義

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16ビット不揮発マイクロコントローラ試作チップ

 東北大学と日本電気は、スピントロニクス論理集積回路技術を応用した無線センサ端末向けマイクロコントローラ回路(MCU)を新たに開発、消費電力を1/80に削減することを実証した。

 スピントロニクスは素子の電荷の有無ではなく、電荷(電子)とともに電子スピンの状態によって情報の記録や演算を行う次世代の半導体素子。日本電気をはじめ各メーカーが実用化に向けて研究開発を行っており、磁気抵抗メモリとして実用化も進みつつある。

スピントロニクス素子のしくみ

 今回、東北大学と日本電気が共同で開発したMCUは、90nmCMOS・3端子の磁気トンネル接合プロセスで作られた16bit不揮発性マイクロコントローラ、RAM/ROM統合64KBメモリ、11個の電源制御回路ブロックなどを搭載する。主に無線センサに用いるマイクロコントローラとしての仕様を備える。

不揮発の素子を用いることでマイクロコントローラ回路全体が超低消費電力化できる

 開発したMCUは、論理回路の中にある電源制御回路や複数の機能ブロックにスピントロニクス素子を使用、待機電力を最小限に抑えながらも高速な電源制御が可能で、とくに機能ブロックへの電源ONは約120ナノ秒と高速なため、小まめに電源OFFすることで不要電力を削減できる。また、回路の中で消費電力の大きいレジスタ内不揮発素子への書き込みの際、電源OFF直前に書き込みを行う回路を作成し、書き込み前後のデータが同じならば上書きをキャンセルするといった不要な動作を削減する工夫を行っている。

従来の半導体素子では待機時にもメモリのリフレッシュのため電力消費が大きかった

 これらの工夫により、開発したMCUは従来型MCUに比べて1/80の消費電力で動作することを実証した。無線センサ用MCUとして利用した場合、センサ端末の電池寿命を10倍に伸ばすことが可能になるという。建物や機器自然環境などに多数のセンサを配置し、無線でデータを収集して解析、道路や建物の状況を把握、効率よく機械を運転するといったセンサネットワーク技術が実用化されつつあるが、無線センサを小型・省電力化することが重要課題とされており、今回の省電力MCUの開発は大きな意味を持つ。

センサ端末とワイヤレスネットワークによるビッグデータの収集・活用はさまざまな用途に利用できる

 また、スピントロニクス技術そのものも高速・小型・省電力と、現在の半導体ベースの記憶・演算素子の限界を超える技術として期待でき、MCUとして実用に供することができるチップの開発は非常に大きな前進と言えるだろう。

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