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次世代電子素子となるスピントロニクス材料に実用化に向けの大きな一歩

東大など、コバルト酸化物における「悪魔の階段」構造を解明

2015年06月05日 19時35分更新

文● 行正和義/ASCII.jp

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共鳴軟X線回折のセットアップ。正六角形の薄片単結晶試料にX線解析を行った  

 東京大学などからなる研究グループは6月5日、コバルト酸化物に対して磁場をかけると現れる新しい磁気構造「悪魔の階段」状態を解明したと発表した。

 悪魔の階段状態とは、スピン配列(磁気構造)に磁気をかけた際に生じる現象で、磁気をかける強さを一定の割合で増加させても磁気構造の磁化は何段もの階段状に増え、その割合は分数値となるというもの。

様々な分数のピークが共存する悪魔の階段状態(各々の温度で様々な周期の磁気秩序が共存する)

 東京大学、京都大学、理化学研究所などからなる研究グループはドイツの放射光施設BESSY IIにおいて共鳴軟X線回折実験を行い、悪魔の階段現象がスピン配列の周期性(同じ方向に揃ったスピンが1:2となったときに安定する)によるもので、磁気的相互作用の正負が距離によって変化するモデルを理論的に解明した。また、コバルトを含む鉄やマンガンなどの遷移金属の物質のスピンでは初めての発見となる。

悪魔の階段とそれを生み出す磁気構造

 スピンによる磁気構造は現在、スピントロニクスとして研究がさかんに行われており、コバルト酸化物のように磁場によって電気抵抗を制御できる巨大磁気抵抗を持つ物質は次世代の電子デバイス材料として大きな可能性を持つ。研究グループでは、ステップ状に磁化される現象がメモリー素子に活用でき、悪魔の階段の詳細が明らかになったことにより新たなスピントロニクス材料の開発に繋がることが期待されるとしている。

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