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次世代磁気記憶デバイスのための新たな発見

理化学研究所、電子スピン構造「スキルミオン」の回転現象を発見

2014年01月27日 16時06分更新

文● 行正和義

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スキルミオンの模式図。電子スピンは渦巻き状に並ぶが、その向きは外周と内周で上向き/下向きに反転している

 理化学研究所、東京大学、青山学院大学による研究チームは、電子スピンの渦状構造体「スキルミオン」が、光や電子線によって特定の方向に回転する現象を発見した。次世代磁気記憶素子として重要な可能性を持つとしている。

円形ディスク状の系に閉じ込められたスキルミオン結晶(青い部分は上、赤い部分は下向きに電子スピンが向いている)に対し、電子線ビームが照射されることで温度勾配が生じる

 キラル磁性体(3次元的に回転させても重なり合わない反転構造を持つ)を磁場に置くとその結晶中の電子はそれぞれスピンする「スキルミオン」と呼ばれる渦巻き構造が生じる。このスキルミオンを制御することにより従来の「金属の一部を磁化」するよりもはるかに高密度で省電力な磁気記憶・演算デバイスを開発できる可能性を持つ。

数値シミュレーションによるスキルミオンの電子スピンの変化(a~cまで9ナノ秒)

 研究では、キラル磁性体としてマンガン・ケイ素化合物(MnSi)、銅/酸素/セレン化合物(Cu2OSeO3)の薄膜に磁場を加え、ローレンツ電子顕微鏡で観察してスキルミオン結晶が回転することを発見した。電子顕微鏡が放射する電子線の熱勾配によって結晶の回転が起き、その現象は個々の渦構造スキルミオンとスピンの集団振動「マグノン」の相互作用によって生じると理論付けている。

 研究チームでは、わずかな電子線による温度勾配でスキルミオンを制御できることが判明したことで、次世代の省電力メモリ素子の設計に大きな可能性が開けたとしている。

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