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従来比で2.2倍のIOPS、モジュール構造、FCoE接続や暗号化機能も追加

「IBM FlashSystem」に2U/48TBのエンタープライズモデル

2014年01月27日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本IBMは1月24日、オールフラッシュストレージの新製品「IBM FlashSystem 840」の販売を開始した。昨年発売したエントリーモデル比で最大2.4倍の実効容量、2.2倍のI/O性能を持ち、FCoE接続やデータ暗号化などの新機能を追加した「エンタープライズモデル」としている。

オールフラッシュストレージの新製品「IBM FlashSystem 840」

基幹システムも適用領域とする「エンタープライズモデル」

 昨年4月発売の従来機(FlashSystem 710/720/810/820)はいずれも1Uサイズだったが、FlashSystem 840のシャーシは2Uサイズ。新たにモジュール構造となり、前面には2TB/4TBのフラッシュモジュールを最大12個、バッテリーモジュールを2個搭載する。背面には2個のキャニスター(引き出しトレイ)に電源、冷却ファン、インタフェースなどのモジュールを冗長化して備える。

FlashSystem 840ではすべてモジュール構造となっておりホットスワップが可能。また無停止でマイクロコード(ファームウェア)をアップデートできるようになった

 従来機と同様に、通常方式のRAID(Single RAID)に加えて「二次元フラッシュRAID(2D RAID)」機能を備えており(関連記事)、フラッシュボード内での(チップ間での)RAID5とフラッシュボード間のRAIDを同時に使うことができる。

フラッシュモジュール構成と容量(発表資料より)。最大構成で実効容量48TB(Single RAID時)/40TB(2D RAID時)となる。2TBと4TBのモジュール混載は不可

 またI/O性能は110万IOPSと、従来機(40~50万IOPS)の約2.2倍に高速化された。外部インタフェースにおいても、従来の8Gbps FC(ファイバチャネル)と40Gbps Infinibandに加えて、新たに10Gbps FCoEと16Gbps FCにも対応している。

 そのほか、金融業界のニーズに対応してデータ暗号化機能(256ビットAES-XTS)が追加されている。暗号化処理はフラッシュモジュール単位で分散される構成となっており、高速な処理が可能という。

 なお、従来機ではSLCチップを採用したモデル(710/720)も販売されているが、FlashSystem 840のフラッシュモジュールはeMLCチップのみとなっている。FlashSystem 840の最小構成価格(4TB、Single RAID、1年保証)は、1576万円(税別)。

IBM FlashSystemファミリーの比較

パートナー協業プログラムも発表、フラッシュ利用の裾野を拡大へ

 製品発表会に出席した日本IBM システム製品事業本部 ストレージセールス事業部長の波多野敦氏は、国内市場では「昨年4月のFlashSystem発表後、同四半期に2桁の出荷があり、続く2四半期でも出荷は倍、倍に伸びた」と、フラッシュストレージに対する需要の高さを説明した。

 「しかしその中で、エンタープライズの基幹ストレージとして堅牢性、保守性をもっと強化してほしいという強い要望が寄せられていた。今回のFlashSystem 840発売により、企業基幹システムの中枢にフラッシュストレージを配置し、安心して利用いただけるようになると確信している」(波多野氏)

 同事業部 ビジネス開発部長の西川望氏は、日本IBMとしてのフラッシュストレージ販売戦略を説明した。

日本IBM システム製品事業本部 ストレージセールス事業部 ビジネス開発部長の西川望氏

 西川氏によれば、フラッシュストレージに対する顧客の期待は「パフォーマンスの改善」「アプリケーションデザインの改善」「ミッションクリティカルなストレージへの適用」という3つに大別される。こうした期待に対し、IBMでは無償アセスメントや実機検証、パートナー連携による具体的なソリューション提案、そして今回のFlashSystem 840の投入といったかたちで具体的に応えていると語った。

西川氏は、フラッシュストレージに対する顧客の期待は大きく3つあるとして、それぞれに対応する具体的施策を紹介した

 今回、新たなパートナー向けプログラム「IBM Flash パートナーズ」も発表されている。これはパートナー各社が得意とする業種、ソリューション領域において、IBM FlashSystemを組み合わせたソリューション構築を推進し、フラッシュストレージの利用拡大と浸透を図るもの。発表時点では13社が参画している。

各パートナーが得意とする業界、ソリューション領域で、FlashSystemを組み合わせたソリューション構築を推進していく

「これがあるならインメモリ型アプリにしなくてもよかった」

 フラッシュストレージはHDDと比較して容量単価が高く(15Krpm HDD比で10~20倍程度)、顧客においても「フラッシュストレージ=高額」というイメージが強く定着しているが、システム全体のTCO(総所有コスト)まで考えると必ずしも高いものではないことを西川氏は強調した。

 「非常に高速なパフォーマンスを提供することで、ストレージとサーバーの台数を削減することができる。これにより、サーバー上のソフトウェアライセンス、電力消費、ラックスペースなどのコストを削減する効果をもたらす」(西川氏)

 高速な処理を求めてインメモリ型アプリケーションを導入する企業も増えているが、西川氏は「開発が複雑で特殊なスキルも求められ、TCOが高くなる」と指摘。実際に、インメモリ型アプリケーションを導入した複数の顧客から「これ(FlashSystem)があるならインメモリを使わなくてもよかった」と言われたケースも複数あると述べた。

「価格が高いのではという“イメージ”」を払拭するため、3月末までキャンペーンも実施している

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