このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

特集連動・グーグルは人工知能50年戦争の勝者か(2)

東大生がロボットに仕事を奪われる日は来るのか

2014年01月16日 16時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

【アスキークラウド2月号・特集連動ロングインタビュー】
知識を使って問題に答える「知識型」人工知能は現在どこまで進化し、どんなビジネスが作られようとしているのか。ロボットが知的労働者の仕事を奪うというのは本当か。人工知能研究の草分けである、慶応大学理工学部の山口高平教授に話を聞いた。


──人工知能を使った「エキスパートシステム」はデータ不足で失敗したという話を伺いました。では、インターネットを通じてデータが蓄積される中で、知能型の人工知能はどのように進化しているんでしょう。

 この20年間で人の知能をシステム化する技術が進んだ。とくに機械学習かな。正しいデータと誤ったデータを両方与えたら、どういう状況なら正しくなるかを勝手に大規模なデータから学習してくれる技術。その機械学習の技術が20年間でかなり進んで、これを基盤としながらいろんな人工知能技術が進み、統合された。

 これを初めにやったのが、IBMが作ったクイズの人工知能「ワトソン」。去年サンフランシスコの病院に最新手術を答える「医療ワトソン」ができて、今年はクレーム対応のためコールセンターに導入されて、それなりの成果が上がっている状況。日本の知識型人工知能のいちばん大きなプロジェクトは「東ロボくん」。

──人工知能で東京大学に合格しようというプロジェクトですね。

ロボットは東大に入れるか2013―東ロボくん、代ゼミ模試に挑戦!―

 一番点がよかったのが世界史かな。代ゼミのプレセンター模試で58点取った。東ロボくんの偏差値は55。日本史は56点取ってる。それなりの大学に入れるくらい。次にいいのが数I。偏差値は51.9くらい。次が現代文と古文で46点、物理が48点。平均で文系3教科なら47.7点、理系3強化で46.2点ある。403大学ある私立大学の80%近くがAランク。国立大学はさすがに無理かと思ってたら、1大学2学部は通るレベル。ただ通っていたのは実は芸術系の大学で、実技試験で落ちるというオチがあったけど。

 それでも私立大学550〜600大学のうち400校で合格圏内に入ったのは驚きだった。現代国語の発表が面白かったが、センター試験で四択とか五択で、評論と小説に分かれている本文があり、文章を単語単位で分けてどれくらい単語が含まれているかマッチングするだけで、何の意味も考えなくても5割が解けると。

──ただ単語の数を数えていけば答えが出るという結論ですか?

 そう。誤りを出せといわれたら、照合率がいちばん低いものを選ぶ。人間がやったら時間がかかるからできないけど、コンピューターが得意な単純な問い合わせだけで半分が解けてしまう。われわれもびっくりしてしまった。エキスパートシステムと同じで常識、世界史の担当者はちゃんとやっていた。世界史の教科書に出てくる用語はだいぶ知識化されているが、世界史の教科書に出てこない普通の用語との関係性がまったく見えてこない。その担当者もウィキペディアに注目していて、ウィキペディアと連携しない限り、60点以上の積み上げは難しい、と。常識との戦いになっていると感じた。

──東ロボくんが100点を取る日が来るとしたら、人間がものすごいスピードで日本語ウィキペディアを見ながら答えているような状況になりますか?

 科目でだいぶ違うはず。数学は東大のプレ模試をやって、4問中2問を解けた。

──私も東ロボくんのものすごい回答を拝見しました。

 すごすぎて代ゼミの講師が分からなかった。逆にセンター試験の数学の点の方が悪かった。センター試験は非常に文章が短い。いわゆる等価変換、式をどんどん変換するシステムが東ロボくんに入っていて、それを使うと100ステップやれば答えにたどりつく。逆にセンター試験の問題は、日本語でヒントをたくさん与えていて、穴埋めで選択する。その日本語のヒントが東ロボくんには分からなかった。

東ロボくんのものすごい「回答」

──平文のほうが難しかった。

 英語の偏差値も低い。41とか。100点満点で26点しか取れなかった。最大の課題はイラストのマッチングができないこと。この文章に合うイラストを選びなさいというのは実際の写真を選ぶより難しい。すごく抽象化された図になっている。画像理解は人工知能にとってものすごく難しい。英語担当者が面白いことを提案をしていたのが、小学生と組みたいということ。英文の内容を日本語に変えるのは(東ロボくんが)やる。そのあと小学生の日本語理解能力を使えばできるはずだ、と。

(次のページに続く)

前へ 1 2 次へ

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中