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特集連動・グーグルは人工知能50年戦争の勝者か(3)

グーグルの自動運転車で製造業が崩壊する

2014年01月17日 07時00分更新

盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

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【アスキークラウド2月号・特集連動ロングインタビュー】
収集・蓄積した膨大なデータをもとに人工知能を研究しているグーグル。グーグルは開発中の自動運転車でどんな世界を目指しているのか。人工知能研究の草分けである、慶応大学理工学部の山口高平教授に話を聞いた。(前編中編後編

──センサー系の人工知能というと、やはりグーグルの自動運転車が浮かびます。

 グーグルの研究開発費(R&D費)は約5000億円。グーグル本社近くにある研究所「X Lab」の3分の1は人工知能関連の研究をしていると言われている。つまりグーグルは約1500億円を人工知能に使っている計算になる。

 グーグルの自動運転車は、セバスチャン・スランというドイツで画像理解をやっていた教授をヘッドハントして作ったもの。最初は山道を走って道をはずれて谷底に落ちるとか、10年前はそういうくらいの映像が残っているような状態。セバスチャンはそれでもめげずにどんどんやって、2012年はネバダ、2013年はカリフォルニアで(運転資格を)取った。5年後はアメリカ全土でナンバープレートをすべて与えられるという。急に人が出てきてもちゃんと止まる。50万キロ走って事故ゼロ。50万キロというのは生涯運転距離。一回だけ事故を起こしたが、赤信号を無視した人間の車にぶつけられたもの。去年ニューヨークのマンハッタンで実験したが、自転車がいきなり来てもちゃんと止まった。

 自動運転車はセンサー系の人工知能。人工知能は「探索」「センサー」「知識」に分けられる。オントロジー(概念体系)は知識。ロボットが絡み、計測センサーの人工知能と、オントロジーをベースにした知識型の人工知能が連携して新しいスタイルを作るというのはあると思うけど、自動運転車はセンサー。技術的には画像とセンサーデータのインテグレーション。グーグルのディープ・ラーニング(コンピューターにデータの構造を認識させる機械学習技術。人間の脳を構成する神経細胞をモデルとして、音声・画像認識などに応用されている)はこうしたセンサー型の人工知能に使われている。

 彼らのチームは、交通事故で人が死んだ場合99.99%はヒューマンエラーだという。それをなくすことができるという。交通事故の医療費は世界で何十兆円。それを激減できる。こんないい話はない。車の運転は人間には向いていないと言いきる。機械でこそ車の運転はやるべきだという。50万キロ走って一回も事故がなかったことがそれを証明している。

 トヨタや日産も無人運転車に行くが、グーグルとは蓄積している技術がぜんぜん違う。前に新聞記者も言っていたが、スマホがハードからOS、アプリへと上へ上へ価値が移行していくように、現在クルマは完全にハードだけど、10年後は自動運転できるかどうかがキーになる。その上で動くアプリで自動車の価値が決まってくると、トヨタや日産の利益がグッと下がる。いまのスマホのようにソフトで決まる。だから産業構造が変わる。グーグルがIT企業を変えるのは分かるけど、産業構造まで変える可能性がある。

 だから、第5世代コンピューターは早すぎた、日本は今こそ人工知能をやるべきだ。ビジネスと非常に絡みやすいし、競争ではなく共創の方へいける。人工知能は2回の夏(バブル)と、2回の冬(バブル崩壊)を経験してきた。3回目のバブルはやっとはじけずに、社会に浸透していけるんじゃないかという希望を持っている。


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