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ゲーム配信の裏側にある容量の増大という課題

2013年12月05日 16時00分更新

文● 腰 裕人(Koshi Hiroto)/アスキークラウド編集部

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 12月3日、ソニーは米国、カナダで11月15日から販売を始めた次世代ゲーム機「プレイステーション4(PS4)」の販売台数が、世界で210万台を超えたことを発表した。ソニー・コンピュータエンタテインメントのアンドリュー・ハウスCEOは、プレイステーションの歴史の中で最高のスタートとなったと述べ、来年の3月末までに世界で500万台の販売を目指す。このような家庭用ゲーム機の普及を陰から支えるのが、コンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)事業者だ。

11月29日から欧州、オーストラリア、ニュージーランド、南米での販売が始まった

 PS4に限らず、最近の家庭用ゲーム機は大抵、ゲームソフトそのものや追加コンテンツをインターネット上から購入、入手できる。オンライン経由のゲームシステムのバージョンアップも珍しくないが、購入後や更新途中でダウンロードに失敗したり、ダウンロードが異常に遅くなっては困りものだ。CDN事業者の役割はまさにデータを「遅延なく、確実に」届けることであり、その最先端を行くのがアカマイ・テクノロジーズ(アカマイ)である。

 月刊「アスキークラウド」創刊号(9月号/7月24日発売)の特集「グーグルも狙うテレビ業界」でも取り上げたように、国内の動画配信事業者の多くはアカマイの技術をベースに、安定したサービスを提供している。アカマイが最近特に力を入れるソリューションサービス「Sola Media Solution(Sola)」では、テレビ、スマホ、タブレットといった端末の種類や、回線の混み具合に合わせて配信する動画の品質を調整する「トランスコーディング」、デジタルコンテンツを配信先の端末の環境に合ったファイル形式に変える「パッケージング」機能のほか、コンテンツの保護機能も備える。

 Solaを支えるのはクラウド技術だ。アカマイは世界中のいたるところに「エッジサーバー」と呼ばれる配信用サーバーを所有しており、それぞれのサーバーでトランスコーディングやパッケージング、コンテンツ保護を施したうえでユーザーに配信している。現在、アカマイは全世界で14万台以上のエッジサーバーを持っている。1つのデータを複数のエッジサーバーにキャッシュし、同時多発的に配信できる環境を整えることで、ひとつのサーバーにアクセスを集中させることなく、安定した配信を実現している。

アカマイのネットワークオペレーション管制センター―ここでトラフィックの管理をしている

 実は、家庭用ゲーム機のゲームソフトや、スマホのゲームアプリでもこのアカマイの技術が生きている。新しいバージョンをリリースする際に、ひとつのサーバーからではなく複数のエッジサーバーにキャッシュして公開することで「14万台以上のサーバーからダウンロードが可能になるので、何百万ものユーザーが同時にゲームの最新版をしたいと思っても、その状況に対応できる」(アーメット・オザルプ国際製品・戦略副社長)。

 もう一つのメリットとしてオザルプ氏は、ダウンロードに関する情報のレポートのフィードバックが受けられる面を挙げる。どれだけのダウンロード数があったのか、何人のユーザーがダウンロードしたのか、また例えば、ダウンロードに時間がかかり過ぎるあまり、途中でダウンロードをやめてしまったユーザーはどれくらいいるのか、といったものだ。

「ゲームはアカマイが創業当初から関わっている重要な業界。ゲーム事業者は激しい競争環境の中にさらされており、コンテンツを充実させて市場に売り込むだけではなく、いかにシームレスに、ユーザーが気がつかないうちに迅速にコンテンツを届けるかがテーマだ。ゲーム端末の高性能化で、扱うファイルも大容量になり、バージョンアップやバグフィクスでアップデートの頻度が増える中、迅速に、かつ確実に配信できるか否かが非常に大事になっている。少なくてもこの領域では、我々はゲーム事業者を支援できると思う」(オザルプ副社長)

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