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なぜプログラミングが必要なのか?【追記あり】

2013年12月04日 07時00分更新

伊藤達哉(Tatsuya Ito)/アスキークラウド編集部

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 12月2日、秋葉原のアキバホールにて、角川アスキー総合研究所(以下、アスキー総研)主催のシンポジウム「なぜプログラミングが必要なのか?」が開催された。プログラミングをメインテーマに15名の登壇者が、4つのセッションに別れて討論した。


セッション1「プログラミングの重要性」

左からまつもとゆきひろ氏、古川享氏

 最初のセッションは、遠藤 諭氏(アスキー総研取締役兼主席研究員)が進行役を務め、まつもとゆきひろ氏(Rubyアソシエーション理事長、アスキー総研主席研究員)と古川享氏(慶応義塾大学大学院教授)をゲストに迎えての討論。
 プログラミングを「毎日がお祭り」と表現したまつもと氏。プログラミングの敷居はそれほど高くないと前置きした上で、「とどまるよりも踏み出した方がいい」とアドバイスに似たメッセージを送った。
 古川氏は大リーグで多くの日本人が活躍しているのに比べて、米国でも知られている日本人プログラマーはまつもと氏しかおらず、ヒーロー的なプログラマーが増えてもいいはずだと期待を語った。


セッション2「スタートアップ×デザイン×プログラミング」

左から深津貴之氏、江原理恵氏

 2番目のセッションは、ジャーナリストの林信行氏が進行役を務め、深津貴之氏(アプリ作家)と江原理恵氏(RE代表取締役)を迎えてデジタルに縛られないプログラムのあり方を語った。
 自己紹介は「花を売らない花売り」の江原氏は、花を店頭で売るのではなく花を使ったクリエーターとのコラボや空間演出、ウィンドウディスプレーの企画とプロデュースを手がける。プログラマーは自分のアイデアをさらにいいものに膨らませてくれるという。ニューヨークを拠点にビジネスを展開している江原氏の最近の注目は教育とヘルスケア。米国では第2の言語をプログラミングにする動きを紹介した。
 iPhoneアプリを開発してきた深津氏は、プログラミングは問題を解決するツールであり武器だという。オフィスがなくてもパソコンとネットワークさえあれば、何倍にでも能力を拡張できる可能性を秘めているのだ。また、林氏は、最近は、子ども用のおもちゃと連動するiPhoneアプリが数多くリリースされており、米国のトイザらスでは専門の売り場が用意されているほど。今後のプログラムは、デジタルだけに捕らわれずにモノと連動して波及する必要性を説いた。


セッション3「教育とコンピュータ」

左から筧 捷彦氏、石戸奈々子氏、鈴木 久氏、瀧田佐登子氏

 3番目のセッションのテーマは「教育」。ジャーナリストの松村太郎氏が進行役で、ゲストは筧 捷彦氏(早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部/研究科 情報理工学専攻教授)、鈴木 久氏(ベネッセコーポレーション デジタル戦略推進部UX開発セクション)、瀧田佐登子氏(一般社団法人モジラジャパン代表理事、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科講師)、石戸奈々子氏(デジタルえほん代表取締役、NPO法人CANVAS理事長)の4人。
 プログラミング教育の取り組みが、かなり広まっている。石戸氏が子ども向けに開いているワークショップは2004年当時の参加者は500人だったが、今年は2日間で10万人もの子どもたちが参加した。瀧田氏が開催するソフトウエア開発のノウハウを教えるイベントでは、遠方や海外からの参加希望が殺到したため、「モジラ・バス」と呼ばれる自家発電機と衛星ブロードバンドを搭載したキャンピングカーが全国を周っている。
 しかし、学校教育としてのプログラミングになると話が変わってくる。筧氏は世界の大学を対象にした「ACM国際大学対抗プログラミングコンテスト」では今年、東京大学が日本代表としては初の3位入賞を収めたことを紹介しつつ、「データ上は全ての小中学校にコンピューターが常備されている」と言うが、大学に入学してくる生徒に聞くと忘れていることが多いという。ただ鈴木氏は、学校の必須教科にすることには反対の立場。教科になると受験のための学習になってしまうことを危惧する。「プログラムは就学ではなく探求にならば夢中になる」という考えだ。教育とプログラムは密接な関わりがあり、官民ともに意識を持つ必要がある。


セッション4「ホットプログラマーズトーク」

左から大前広樹氏、増井雄一郎氏、高橋憲一郎氏、安川要平氏

 最後のセッションはZaim代表取締役の閑歳孝子氏が進行役を務め、大前広樹氏(ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン日本担当部長)、増井雄一郎氏(FrogApps取締役CTO、トレタCTO)、高橋憲一氏(日本Androidの会 幹事、スマートエデュケーションSoftware Engineer、Hack For Japan、東北TECH道場講師)、安川要平氏(IPA 2012年度未踏スーパークリエーター認定者、YasuLab代表、レキサスアカデミー常任講師、Railsチュートリアル発起人)のプログラマー4人がゲスト。ホットなプログラマーの生の声を聞いた。
 大前氏は14歳の時にマッキントッシュが自分の部屋にやって来て、神保町の本屋で技術書を立ち読みしてプログラミングをスタート。高校時代はプログラミングの授業を提案し、自身が教師になり同級生相手にプログラミングを教えていたという。
 増井氏はパソコンを持ち歩いていつでもどこでもプログラミングをしていることで有名。高校時代のアルバイトで顧客管理の仕事を任されて以来、プログラミングが趣味から仕事に変わったという。
 高橋氏のプログラミングとの出会いは、子ども向けの雑誌の付録がきっかけ。近所のアマチュア無線の店に通い詰めプログラムの動き方が想像できるようになった。仕事を始めてからは出会ったC++言語の本を熟読してC++に熱中したという。現在は、宮城県の被災地でプログラミングを教える活動をしており、コードで世の中を良くしたい気持ちが強いとのこと。
 4人の中で最も若い安川氏は教材が豊富に揃っている中でプログラミングを覚えた。やりたいことを実現し完成度を高めるためにその都度必要なプログラミングを覚えたという。山岳用の山行計画のデータベースを作ったり震災直後にホイッスルのアプリなどをリリースしたりしている。誰かに発注するよりも自分でプログラムできれば早くプロジェクトが進み成功する可能性が高まるとプログラマーの優位性を語った。


 さまざまな分野で活躍するゲストからプログラムの重要性を聞いた今回のシンポジウム。学生を対象にしたプログラミング講座の受講者からは「文理関係ない」という声も聞かれたという。来場者は、プログラミングの無限の可能性を再確認できた。

 なお、シンポジウムの最後には、このイベントを協賛したサムスン電子ジャパンから、来年度からCSR活動して取り組むアプリ開発者養成講座が紹介された。同社の難波健一上席部長Communication Team長は、アプリ開発に興味のある人は多いのに踏み出せない人が多いというデータを紹介。そうしたことから、16~30歳の若い人たちを対象に年間100名(初年度50名)のスクールを展開するという。

お詫びと訂正:記事初出時、高橋憲一氏のお名前を誤って記載していました。お詫びして訂正いたします。(2013年12月4日)

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