返品しやすさを求めるなら、日本の要求は米国より高い
── ブログなどを拝見すると、ザッポスを意識した発言もされているようですが。
田中 ザッポスは非常にリスペクトしている会社なので、コピーしているという表現をされると違う気はしますが、この事業をする上で最も参考にすべき例だと思っています。ザッポスにいかに追いつくかというのは私の頭の中に常にあることです。とはいえザッポスのウェブサイトやサービスを完全コピーすれば成功するかといえば、そうではないと思います。日本カスタマイズという点では、ウェブサイトでもサービスでもお客様の声を聞きながら進めています。
── 靴を買う、服を買うという際に日本ならではの要素はありますか。
田中 そうですね……。1つ思ったのは日本はアメリカと比べると店舗に商品を置きやすいと感じる部分があります。その際に返品が通販ではやりにくいとなると、面倒だから店舗に行こうとなってしまいます。だからザッポス以上に返品しやすくする必要があったというのが大きいですかね。着払い伝票も同梱するという話とか、返品登録不要で、届いたものを確かめて合わなければ返品できると。場合によっては電話で受け取りにも行きますし。返品しやすさを世界一になるぐらいの水準で目指しましたね。
同じ返品できる靴のECサイトでも対照的な考え方だ
── 返すことを想定して売る人というのは過去あまりなかったと思うので、興味深いと感じました。国内ではアマゾンの「Javari」といった競合もありますが。
田中 われわれより先行して、送料無料・返品無料、そして靴メインというビジネスを先に開始していて、かつアマゾンの持つ、資本力やオペレーション力がある。すごいと思っています(笑)。だからわれわれがJavari以上であるという気はまったくありません。
ただし私がすごく感じているのは、Javariのサービスはわれわれの考え方とは対極的なものなのではないかなということです。アマゾン・ウェイが確立しているというか、コストを安くする、すべてを効率的にやる、というのが徹底している。
一方われわれはこうした1点にこだわるというよりは、お客様や取引先の細かなニーズに対応していくことを考えています。返品ひとつとっても、システマチックにネットからのみ受付るというのではなく、インターネットに不慣れだというお客様でもできる返品のしやすさを考えています。あるいは電話注文を受付けたりもしています。(Javariとロコンド)どちらが正しいということではなく、対照的な思想の違いがあるのではないかと思っています。
── 一見同じように見えるけれども、コンシェルジュ的なサービスもサイトの中で効率よく完結させるという考え方とは対照的ですね。
田中 はい。コンシェルジュは購入にかかわる相談には何でも乗りますし、時にはロコンド以外で買える商品をお勧めすることもあります。なんと表現していいのか分かりませんが、「人」という感じなんですよね。ウェブサイトにもそれが出ているんじゃないかと。見やすいけれど無機質な感じがするサイトよりは、暖かい感じを出したい。ターゲットも思想も真逆かなと思います。
ほっこりする体験、サイトでも人とのふれあいを
── こういった発想が売上成長率の増加に結びついていると。
お話を総合すると、EC市場自体が大きくなっていて、ネットでファッションを選びたいといったニーズが増えていく中で、いろいろな選択肢があっていいと思う。その中で、店舗で買うのと同じような感覚で人から買うようなサイト、というポジションを作れているということでしょうね。
田中 このたとえが正しいかどうかは分からないですが、全社の総会でレストランにたとえました。Amazonがマクドナルドみたいなイメージだとすると、Zozotownはオープンカフェみたいなイメージ。ロコンドは何かというと、昔ながらのおばちゃんがいるようなほっこりするような定食を出す店。そんなイメージで……。
── そこまで庶民的にとらえていいんですか?
田中 そこは難しいところなんですが、新橋のおでんやまでは行かないけれども、街でいうと二子玉川にあるような。マクドナルドやオープンカフェとは違うような店なんですよね(笑)。
── マニュアルがしっかり定まっていて店員のランクもその理解度で決まるようなマック、クールな感じがあるけれども店としての対応が固まっているオープンカフェ。それとは違う店員とコミュニケーションをとりながら食べるメニューを決めたりするというイメージなんですね。
田中 そういうイメージです。そう考えたときに私が持っているイメージは、これまでファッションを通販で買ったことないようなお客様。そういう層にはわれわれのようなモデルのほうがフィットするんじゃないかと。そういう住み分けが出てくると思います。
── 住み分けるとなると、キャラクターの確立が重要です。
田中 それがあるから成長できた。イメージ調査でもいま申し上げたような分布になっていますし、だからこそ今後ファッションECが伸びていく中でわれわれが担う責任も感じています。