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ヴイエムウェアのSDDCビジョン、その進捗と将来について聞いた

「サーバー仮想化の成功でSDDCにも弾み」ゲルシンガー氏

2013年11月19日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 今月上旬に開催された「vForum 2013」に合わせ来日した米ヴイエムウェアのCEO、パット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)氏が11月8日、記者のインタビューに応じた。データセンターのさらなる仮想化に向けて同社が推進する「Software-Defined DataCenter(SDDC)」ビジョンの進捗と将来について聞いた。

米ヴイエムウェアCEO、パット・ゲルシンガー氏

――ヴイエムウェアが提唱しているSDDCビジョンについて、顧客の反応はいかがですか。

 顧客はSDDCというアイデアに共感を寄せている。

 特に、すでにサーバー仮想化を実施して大きな価値を得ている顧客は「話が早い」。仮想化の範囲をデータセンター全体に広げ、次はネットワークやストレージの領域でサーバーと同じ価値を得ようというアイデアなので、すぐにSDDCのメリットを理解してもらえる。

 そうした顧客との会話は、すでに「If」(SDDCに取り組むべきかどうか)ではなく「How」(どうやってSDDCに取り組むか)になっている。「次のステップに進むには、どうすればいいのか」と尋ねられるわけだ。

――SDDCのコンセプトは理解しているが、具体的にどこから始めたらいいかと迷っている顧客も多いと思います。どこから手を付けるべきだと答えていますか。

 簡潔に答えるならば、オペレーションや管理の分野から変えていきましょう、と勧めるだろう。(サーバー仮想化が完了すれば)ここが次のステップになるのは明らかだ。

 ただ、一般的に顧客に言っているのは「われわれと一緒に取り組みましょう」ということ。ヴイエムウェアではプロフェッショナルサービスを用意しており、2、3カ月かけて(SDDCの実現に向けた)ロードマップの構築、あるいはさまざまなアドバイスの提供ができる。たとえば、どのくらいコストがかかり、どのくらい節約できるのか、財務的なプランを立てることができる。ユースケースの紹介や、顧客が実行すべきステップを描くこともできる。当社が顧客の計画に関与して、そうしたお手伝いができることを説明している。

――SDDCについて、実際の進捗度合いをどのように見ていますか。いつごろそのビジョンは完成するのでしょうか。

 数字をつけるならば、まずサーバー仮想化についてはおそらく70%完了している。一方で、(仮想化環境の)マネジメントや自動化といった領域はまだ10%未満。ネットワークやストレージ領域の仮想化は取り組みが始まったばかりであり、まだまだ道のりは長い。

 だが、サーバー仮想化の歴史を振り返ってみると、それは2004年から始まり、およそ10年後の現在、70%に達している。これをもとに考えると、SDDCビジョンが真に実現される(完全に顧客環境で普及する)までには、おおよそ10年はかかるということになる。

 もっとも、すばらしい価値があることはサーバー仮想化の領域で実証されている。だから、ネットワークやストレージ、自動化といった領域の取り組みにも弾みがつくだろう。したがって、10年もかからず6~8年で完了するかもしれないが、いずれにせよ1年で終わるような話ではない。

――今年8月にはネットワーク仮想化プラットフォームの「VMware NSX」が発表されました(関連記事)。ユースケースについて聞かせてください。

 たとえば米イーベイ(eBay)の事例。オンラインオークションを手がける企業なので、サービス競争力を維持するためには、新しいアプリケーションをどんどん迅速に展開していかなければならない。しかしこれまでは、ネットワーク機器やファイアウォールの設定変更を行う必要があり(平均で)49日間もかかっていた。だが現在は、仮想マシンを立ち上げるのとほぼ同じスピードで仮想ネットワークを用意し、アプリケーションを展開できるようになった。

 つまりイーベイでは、より安価で、セキュアなネットワークが実現し、「アプリケーションを展開すること」にフォーカスした環境ができたわけだ。

 ときに「ネットワークの仮想化により、ネットワークがセキュアでなくなるのでは」と考える人もいるが、実際はその逆だ。セキュリティのレイヤーが“積み増される”ため、よりセキュアになる。たとえば物理ネットワークにファイアウォールがあり、さらにオーバーレイの仮想ネットワークに仮想ファイアウォールを積み増すことができる。また、物理ネットワークが1つでも、仮想ネットワークで複数のドメインに分割することも可能だ。仮に1つの仮想ドメインが攻撃を受けても、隔離されているほかのドメインには影響を及ぼさない。

――ストレージ分野では「Virtual SAN(VSAN)」も発表されています。ストレージの仮想化に関してはどのようなビジョンを持っていますか。

 少し複雑な話になるが、説明しよう。

 (ストレージ仮想化に求められるのは)まず第一に、ポリシーを定義し、仮想的な管理レイヤーを通じて適用できる「ストレージポリシー管理」の仕組みだ。ポリシーとは、たとえば「ストレージ容量はこれくらい、パフォーマンスはこれくらいが必要で、バックアップはこの間隔で」といったものだ。現在は、アプリケーションをストレージ管理者に渡して、管理者が手作業でもってストレージを構成し、特定のLUNやファイルシステムにポリシーを適用している。我々はそれを抽出してルール化し、適用できるようにする。

 また、ストレージサービスそのものを仮想化し、物理的なディスクアレイ(ストレージ機器)から切り離すこと。これはネットワーク仮想化のファイアウォールやロードバランサーといったものと同じだが、ストレージのバックアップ、スナップショット、レプリケーションといったサービスを、仮想アレイの中で管理できるようにする。現在は、バックアップポリシーが特定のストレージ単位と結びつけられており、これを移動させたり、自動化したりすることができない。そこで、仮想ストレージサービスというものを用意するわけだ。

 3つめに、サーバーのDASと外部ストレージを1つのストレージレイヤーとして、完全に結合できるようにしなければならない。

 こうした要素がすべて実現するとどうなるか。たとえば、「これだけのストレージ容量とパフォーマンスが必要で、バックアップやレプリケーションのポリシーはこうだ」と要求するアプリケーションがある。このアプリケーションがプロビジョニングされると、要求を満たすストレージがDAS、あるいはサーバー上のフラッシュ、外部ストレージで(自動的に)確保される。同時に、バックアップやレプリケーションなどのストレージサービスも管理される。VMwareの「Software-Defined Storage」ビジョンを実現すれば、こうした要素がすべて実現する。もちろんディスクアレイ側にはインテリジェンスが必要となるが。

 まずポリシーを上位のレイヤーで定義して、そのもとで、ストレージやアベイラビリティは仮想的なサービスとして提供されることになるわけだ。

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