このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

レガシーシステムを作った富士通だからこそのモダナイゼーション

イノベーションへの一足飛びより現実的な富士通の“Next”

2013年05月20日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

5月17日、富士通はモダナイゼーションサービスに関するラウンドテーブルを開催した。ラウンドテーブルでは、レガシーシステムの漸次的な刷新を実現するモダナイゼーションを現実解にするための富士通の方針や施策について披露された。

現状と理想の間に「あるべき情報システム」

 ラウンドテーブルに先だって行なわれたプレゼンテーションでは、富士通が考えるレガシーシステムの現状とモダナイゼーションについて事業推進統括部 戦略企画室長 柴崎辰彦氏とSI技術本部SVPの中村記章氏が説明した。

富士通 事業推進統括部 戦略企画室長 柴崎辰彦氏

 現在の企業システムの大きな課題として挙がるのが、部分最適で過去に作られたいわゆるレガシーシステムだ。世代や開発手法の異なるシステムが改変を重ねて作られたレガシーシステムでは、先進技術やめまぐるしく変わる経営・事業環境に対応できない。しかし、こうしたレガシーシステムはサイズ自体が膨大になっているほか、仕様書などのドキュメントが不足し、古いモノと新しいモノが混在している状態。ユーザー企業のICT投資の6~8割強がこうした資産の維持・運営のために費やされ、新規の投資に回せない。この状況を打破し、イノベーションに使えるようにするのが、富士通の考え方だ。

 執行役員 SI技術本部長の遠藤明氏は、クラウドの台頭が進みながら、レガシーシステムが刷新されていない現状を指摘した。「3年前にクラウドが勃興した際には、大きな期待感があった。3年経った今、サーバー統合や仮想化は進んだが、実際はクラウドの上に従来型アプリケーションがサイロのまま乗っかっているだけ。老朽化したアプリケーション資産が延命している」という課題を語った。こうした点から、既存資産を最適化していくためのモダナイゼーションは、富士通にとって非常に重要だと説明した。

富士通 執行役員 SI技術本部長 遠藤明氏

 今回打ち出した富士通の戦略で興味深いのは、“AsIs(現状)”と“To Be(理想)”の間に、“Next”というフェーズを挟み込んだことだ。クラウド、ビッグデータ、ソーシャル、モバイルなど4大トレンドを意識したイノベーティブなシステムに“一足飛び”するのではなく、既存システムを活かした形で、アプリケーションやIT運用、インフラのモダナイゼーションを実現していくべきというのが富士通のスタンスである。「できるだけ既存システムを活かして、成長発展させたいというニーズがあります。そのためにモダナイゼーションをやりながら、“Next”と呼ばれる“あるべき情報システム”に持って行く必要があると思っています」(中村氏)。

企業システムの課題

 こうした“あるべき情報システム”は、経営やビジネスの変化に追従できる「柔軟性・俊敏性」、ビジネス情報を活用し迅速な意思決定を可能にする「組織能力の最大化」、そしてICT利活用による「イノベーションの加速」という3つの価値を持っており、ある意味、永遠に実現しないかもしれない“To Be”に比べて、実現可能性も高い。

 しかし、現状のモダナイゼーションではレガシーシステムを仮想化したり、最新ハードウェアに載せるといったレベルが多く、根本的な課題であるアプリケーション資産の問題に行き着いていない。アプリケーション資産では、プログラムコードにおいて変更箇所や影響範囲がわからないこと、設計書とソースコードに不整合が生じていること、開発作業が俗人化している点などが大きな課題となっている。これらを解決するべく、富士通では稼働状況や課題の「見える化」、既存資産の重複を排除する「スリム化」、システムのコンポーネント化と疎結合により再利用を容易にする「最適化(サービス化)」の3つのステップで、真のモダナイゼーションを実現するという。

Nextのアーキテクチャ

(次ページ、これから作るシステムはレガシー化しない?)


 

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード