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既存アプリケーション温存ではクラウド移行の意味はない

富士通が正面から取り組む「レガシーシステム」という怪物

2012年01月19日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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1月18日、富士通は定例となっている「SIビジネス勉強会」を開催した。富士通 サービステクノロジーグループ 共通技術本部 本部長の柴田徹氏が、日本企業のIT予算を新規プロジェクトに割り当てられない原因となっているレガシーシステムに対する課題解決を中心に説明を行なった。

レガシー化問題が喫緊の課題

 SIビジネス勉強会は、クラウドの台頭やビジネスのグローバル化の進展で大きく変わりつつあるSI(System Integration)の現状や課題、そして富士通が提供する解決策を説明するプレス向けイベントで、2007年から不定期で行なわれている。今回のメインテーマは「既存システムの課題」。柴田氏は、「正直言って地味な話だが、既存資産をなんとかしないと新規プロジェクトに予算を振り分けられない。今日はこの課題に関して、富士通がきちんと答えを出していけることをご理解いただきたい」と前振り。2011年の実績として新要件定義技法「Tri-Shaping」やアプリケーション開発の工業化を実現する「開発クラウドセンター」などの施策をまず振り返った。

富士通 サービステクノロジーグループ 共通技術本部 本部長の柴田徹氏

 次に柴田氏は顧客に共通した課題として、「グローバリゼーション」を挙げた。海外市場への対応や外資系企業との競争に勝ち残るためには、ICTの利活用は必須になる。実際、調査会社のリサーチでも業務プロセスの効率化よりも、事業の経営判断の高速化などのニーズが高くなっているという。また、これに伴ない、多くの企業がIT部門をより運用管理から戦略・企画を中心にした組織にしたいと考えていると説明した。

既存システム資産を更新する際の課題(出典:日経BPコンサルティング)

 しかし、こうした変化を妨げているのが、すでに持っているICT資産の存在だという。柴田氏は、「日本は既存システムの運用に世界標準よりも10%程度高いランニングコストをかけている。一方で、世界の企業は全体の3割くらいをイノベーションに振り分ける。この程度ならまだ小さいが、ICT/年商比率を考えると、北米は日本の5倍くらいICTの予算を使っている。これではよそには勝てない」と説明した。とはいえ、仕様書などのドキュメントが不十分、更新すべきシステム資産が大き過ぎる、更新による効果が見えないなどの更新作業の課題があるため、多くの企業がずるずると既存システムの維持を続けているのが現状。「IT部門もクラウドや仮想化などに取り組んでいるが、既存アプリケーションがそのまま移行しただけでは、なにも変わらない」と指摘した。

レガシー問題を解決する富士通の3つのアプローチ

 こうした既存システム資産の課題を解決すべく、柴田氏が明らかにしたのが、モダナイゼーション、成長開発、ICT投資評価という3つのアプローチだ。

既存システムの課題に対応する3つのアプローチ

 モダナイゼーションは「スリム化」をベースにし、柔軟で最適な刷新を行なうもの。アプリケーションやDBの稼働状況や利用上の課題を見える化し、統廃合を実施。さらに最新プラットフォームの導入やインターフェイス標準化、アプリケーションの部品の共通化などの最適化を進めるという。「無駄な部分をダイエットし、次のビジネスに使える筋肉質なものに変えていく」(柴田氏)ということで、運用コストの中で既存資産を利用したまま、再構成を進める。あるユーザーの事例では既存システムの見直しにより、972のバッチジョブ、2万2000件の帳票を削減し、DBのライセンスを2割削減できたと話す。「日本では、モダナイゼーション=延命措置という意味ではない」(柴田氏)ということで、既存システムを有効活用するための重要な手法に位置づけられるという。

アプリケーションをスリム化するモダナイゼーション既存の資産を活かして、次の一手が打てる 

 次に紹介された「成長開発」はビジネスにあわせて必要な機能を、必要な分だけ開発する「アジャイル開発的なアプローチ」になる。この成長開発を実現するために用意しているのが、要件を構造化し、なにがいつ必要かを見極める「Tri-Shaping」になる。また、前述した「開発クラウドセンター」やプロジェクト運用基盤「ProjectWEB as a Service」などを活用し、必要に応じてすぐに開発するための「アプリケーション開発の工業化」を実現するという。

 3つめのICT投資評価は、文字通りシステムがビジネスに貢献できているかを、継続的にチェックする作業。ビジネスとICTのつながりを評価すべく、「フィールド・イノベーション」と呼ばれる現地での調査やインタビュー、作業確認などを行なうほか、改善のためのワークショップやモニタリングを進めるという。また、本日付でICTの健康診断サービスを謳う「Quality-shaping」をスタートし、ICTシステムの安定稼働を支援する。さらに今後の展開として、保守難易度の評価まで踏み込む予定となっている。

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