宇宙エレベーターの疑問質問を宇宙エレベーター協会に聞いてきた
劇場版とある魔術の禁書目録の舞台・エンデュミオンとは
2013年03月15日 17時00分更新
宇宙エレベーターの構造を教えてほしいですの!
大野 「縦に長い静止衛星と考えてください。
厳密には動いていますが、地球の自転と同じ速度になる赤道上高度約3万5786kmにあるため、観測点からは静止した状態に見えるんです。気象衛星などと同様ですね。
宇宙エレベーターを建造する場合、まず静止衛星からテザーを垂らすのがいいだろうと言われています。
そうするとテザーが地上に向かって降りた分、衛星も重力で落ちていくんですね。そこで、その反対(宇宙側)にも同じ分だけ重さを加えてバランスを取ります」
下の図の通り、うんと長い静止衛星というわけですね。
YouTubeにも宇宙エレベーターのイメージビデオが宇宙エレベーター協会により投稿されている。動画では、テザーの描写に加えて、クライマーの推進力はレーザーになっている。
―― テザーって何なのでしょうか、会長さま?
大野 「紐みたいなものですね。カーボンナノチューブ……CNTって略すとかっこいいんですけど、現状ではCNT製テザーを垂らすのがいいとされています。そのテザー自体がケーブルになるので、そこをエレベーターみたいなカゴ(クライマー)で昇降して人や荷物を運搬するというのが宇宙エレベーターです」
―― CNT製テザーはすごく太いってことなんですの?
大野 「逆ですね。すごく細くて薄いものを想定しています。CNTも数千キロ垂らすと自重で切れてしまうと言われているのですが、そこはテーパー構造を用いることで解決可能と目されています。
テーパー構造とは真ん中を太く、言うなれば東京タワーを2つ、根元部分で合体させたような形で、宇宙エレベーター用のテザーに適用すると、巨大な縦長の菱形を想像していただければと。まあ、あまりにも長いのでパッと見は直線ですが。
NASAが提案しているものは、新聞紙と同じくらいの厚さで、幅が3フィート(1m弱)、そして長さが約10万kmのテザーです。この場合、最も厚いところでも数mmです。これで20t程度のクライマー(カゴ)が登れるだろうと言われています。というわけで、単なる長い紐のまま破綻しないとなると、共有結合を超えた技術がないと難しいですね」
劇中ではスペースプレーンの事故を機に建造されましたが
そもそもスペースプレーンよりも安全な乗り物なんですの?
大野 「軌道速度を出す必要がないので、そのための爆発的な加速や減速が不要ということもあり、より安全ですね」
―― デブリにぶつかる可能性も少ないんですの?
大野 「デブリがヒットする可能性はありますが、このあたりは建造時の状況次第ですね。どちらかというと、デブリが当たる、その当たったときの修理時間と宇宙エレベーターの運用時間の割合によるでしょう。9割修理で1割運転では実用的じゃありません。
しかし、新幹線でさえ毎日のように点検作業時間があることを考えれば、その比率によってはデブリが当たることを前提とした建造も妥当と思われます。そもそも軌道ステーションなどは数km単位で移動できることを前提としていますので、事前にデブリの軌道が判明すれば自ら動くことで回避できるでしょう」
エンデュミオンは東京に建造できるんですの?
大野 「アニメの学園都市のイメージモデルは西東京と聞きました。たとえば建設地を立川市役所と仮定すると、その場所は北緯35度41分27秒。宇宙エレベーターは赤道上に作るのが最善とされていますが、南北30度あたりまでは大丈夫とも言われています。
ただ赤道から外れている場合、赤道に向かって、地上を這うようにテザーが伸びていき、赤道に近づくにつれて上に登っていく形状になるので、東京周辺ではテザーは直立しないのです。
某ロボットアニメに登場する某粒子的な、現在の科学を超越したものが見つからない限り、エンデュミオンは劇中のように学園都市内で直立しません。たとえば、高度に合わせて密度が変化する物質が見つかっているとか……」
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