営業2000人がタブレット、顧客獲得はスマホのUFJ
三菱東京UFJ銀行のリテール部門では、昨年から2000人の外訪営業担当者がサムスンの「GALAXY」タブレットを使いはじめている。稼働率は70%超。
営業資料はすべてアプリになっている。担当者は、投資信託100種類、保険30種類をつめこんだ重いパンフレットを持たなくて済む。また、顧客との距離も近くなる。ノートパソコンと違って、隣から話しかけるように営業ができる。
顧客獲得の鍵を握っているのは、スマホだ。
リテールの営業先は、預金1000万円以上の「B層」、1億円以上の「C層」が中心。注目したのは年間約21万人が預金1000万円以下の「A層」から「B層」に移行すること。新規にB層を獲得するより、若いA層の顧客を手厚く育てる方が効率的だ。
A層とのつながりで拡大をねらうのがスマホだ。KDDIとの合弁事業「じぶん銀行」などをアンテナショップに、スマホから顧客へのアプローチを進めていく。
「とりあえずスマホ対応」では勝てない、勝負を決めるのはクラウドだ
スマート戦略をとりはじめた2社が課題に挙げるのは高度なデータ処理だ。
ANAなら顧客の動きを見えるようにすること。バナー広告を出しても、それが直接購入に結びつくとは限らない。バナーを見たあとにリスティング広告が目に入り、クリックした可能性もある。費用対効果を高めるため、顧客の動きを把握したい。UFJならタブレットに顧客情報を集中させ、取引もそこで済ませていきたい。
顧客情報のように機密性の高いデータを収集し、リアルタイムに処理することは、スマートフォンやタブレットだけでは不可能だ。その裏側には巨大なサーバーがあり、システムがあり、クラウドサービスを運営する企業が動くことになる。
UFJはタブレット管理システムにSAP社の「Afaria」を採用した。アプリを会社から制御したり、端末がなくなったときにはリモートでデータを削除したり。そうした高度なセキュリティーを保ちながら管理負担を減らすためには、現状「ここしか選択肢がなかった」という。
企業はパソコンを離れ、スマートに向かう。そこで勝敗を決めるのはデバイスの先にあるクラウドだ。その視点が欠けたまま、みんな使ってるから、といった理由で「とりあえずスマホ対応」を進めるのは、あまりスマートな考えではない。