時間の感覚を正常に戻すには
そうはいっても、筆者を含めた多くの人にとって、仕事はいつもテレビ・スタジオやリングの上とは限らない。状況や心のコンディションによって、時間感覚は日々変わってしまう。時間感覚は個人的なものだけれど、多くの仕事は共同作業だから、そんな時間感覚のズレはときにはトラブルを招いてしまう。忙しいときは時間がいくらあっても早く過ぎ、ヒマなときは時計の針はなかなか進まない。
下に紹介したのは、伝統的な知恵を現代風に変えたものや、いろいろな専門家に教示してもらった方法。筆者が実践して、時間感覚の修正に効果があったものを選んでみた。
●時間がゆっくり過ぎていく感覚の場合
○未知の経験に対する順応が高いと、ゆっくりに感じない
子供の頃に、時間がゆっくり進むように感じるのは、未知の経験が多いことによるといわれている。歳を重ねるごとに、さまざまな経験が増え、いろいろな状況に対応ができるようになることで、時間の感覚を早く感じるといわれている。
そのためには、未知の経験をしそうな場合はリサーチを充分におこなっておく。初めての場所でプレゼンをするなら、下見をしたり、他人のプレゼンなどを見学しておく。会議や打ち合せであれば、内容はもちろん、発言者のバックグラウンドをある程度知っておくと相手の発言に集中しやすい。
○反復する動きをする
身体を動かせない、会議や打ち合せ中であれば呼吸に集中したり、机の下など、見えないところで指で足をタップするなど反復する動き。5分ほどつづけるだけでもゆっくりと時間が進むと感じているときは効果がある。駅のホームや列車の中など、列車や目的地への到着の時間をもてあましているときは、ホームや車両の先頭から終わりまで歩くと「ああ、時間が進まない!」というイライラにも効果的だ。
●時間があっという間に過ぎてしまう場合
○コーヒーや紅茶などカフェインを含むものを適度に摂取する
ただし、飲み過ぎや寝る前の摂取は注意が必要。
○クレームや説諭など、イライラやストレスを感じそうな仕事から手をつける
ただし、長くなり過ぎると、お互いの時間感覚や人間関係をずらしてしまうので短く簡潔に。
○数回ジャンプをして、身体を刺激する
身体全体への軽い刺激は、身体的な防御本能を呼び覚ますようで、時間感覚を早める効果がある。ただし、空腹時におこなうと食欲が減退することもある。床や周囲の状況にも注意して。
時間があっという間に過ぎてしまうときは、楽しいなどリラックス状態か、難しい仕事が終わらないなど、何かに集中している場合。もし、そうした時間感覚で上手くいけばいいけれど、それが原因で失敗してしまいそうなときは上の方法で少し時間の流れをととのえるのがいい。
相撲取りが土俵際でやるような、顔を軽くパチパチと自分で叩くのも、短時間で的確な判断をするのに効果があるというスポーツ専門家もいる。ただし、筆者の仕事ではなかなか難しいのでこれはやっていない。もし、お試しになるなら自己責任で…(笑)
時間感覚のズレの揺り返しに注意
例えば、事故などを体験して、しばらく呆然としてしまうように、時間感覚のズレは揺り返しとして反対の感覚とセットになっていることが多い。週末をダラダラし過ぎてしまうと、その揺り返しで週明けの仕事が憂鬱になることも……。そうしたことを知っておくことも、時間感覚と上手く付き合う方法だと筆者は思っている。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。
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