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「自宅でコードを書くプログラマー」は優秀か?

2013年01月30日 10時01分更新

中野克平/Web Professional編集部

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 靴の通販サイトの記者発表に現れた社長の靴は擦り傷だらけで汚かった。あまりに汚いので「社長はどんな靴が好きなんですか?」と尋ねると、「あ、ボク別に靴が好きとかじゃないので」だそうだ。「靴の通販」事業にベンチャーキャピタルが出資してくれて起業した社長が、「あ、ボクが好きなのはお金ですから、靴なんてどうでもいいでしょ」と言っているように聞こえてしまい、しばらくその会社の記事を書く気がしなかった。

 もう昨年になるが、コラボレーションツールのConfluenceやプロジェクト管理ツールのJIRAを開発・販売しているアトラシアン社アジャイル エバンジェリストのニコラス・マルドゥーン氏とのインタビューが終わりにさしかかって、ソニーやパナソニックといった日本企業はなぜ元気がなくなったのか? なぜ日本から人々の生活を一変させてしまうようなソフトウェアが登場しないのか尋ねられた。私の答えは「日本のプログラマーは自宅でコードを書く人が少ないから」。マルドゥーン氏は「あー、なるほど!」という表情を浮かべて、「アトラシアンには、個人的に複数のオープンソースプロジェクトに関わっているエンジニアがいっぱいいるよ」と応じてくれた。

 私が靴の通販サイトの存続を危ぶむ記事を見かけて、「まあ、そうだろうね」と思ったり、マルドゥーン氏の質問にとっさに答えたりした言葉の背景にあるのは、「自分が好きなことを仕事にしろ」というある種の価値観だ。もちろん、すべての業界、職種に押しつけるつもりなはない。お金を数えるのが大好きで銀行員になった、新幹線好きが高じて運行管理システムのエキスパートになったのたぐいは面白いかもしれないが、あるべき論として押しつけるのは無理がある。だが、スターバックス社CEOのハワード・シュルツ氏はコーヒー好き、フェイスブック社CEOのマーク・ザッカーバーグ氏がメッセンジャーアプリPokeのコードを書いた、と聞くとなんだか嬉しい気分になるのは、「関わっている人が楽しんで作っているのならいいものに違いない」というある種の信仰があるからだろう。

 クラウドとスマートフォン、タブレットの組み合わせは人々の生活や働き方を変えてしまうパワーがある。しかし、そこで使われるソフトウェアは、カスタマーサポートから届く不具合や「貴重なご意見」に優先順位を付け、上から順に潰していく開発環境からは生まれないだろう。アジャイル開発ツールとして急速に普及したConfluenceやJIRAの開発では、ユーザーからフィードバックを受けることはあっても、開発方針を持っているのはそれぞれの製品マネージャーであって、「ユーザーの意見が多いからこの機能を付けよう」のような安易な顧客志向で製品を改良することはないという。趣味でコードを書くプログラマーなら当然持っている、「こんなソフトウェアがあれば最高だ!」というビジョンがあるから、ユーザーに先んじてソリューションを提供し、革新的なソフトウェアであり続けられる。少なくとも「世界を変えてやる!」とイノベーションを志すのなら、自宅でもコードを書くような情熱が欠かせないのだ

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