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スケールアウトNAS「アイシロン」のすべて 第1回

ファイルシステムもボリュームも1つ!

従来型NASの限界を打ち破るアイシロン

2012年10月10日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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1つのバケツで済むスケールアウトNASのコンセプト

 アイシロンのスケールアウトNASを開発したアイシロン・システムズが設立されたのは、今から10年前の2001年にまでさかのぼる。当時は、データ爆発のような懸念はまだ一般的ではなく、ビッグデータや仮想化、クラウドなんて言葉もまったくなかった頃。しかし、同社は古典的なディスクアレイ装置や導入が進みつつあったNASの限界が、遠くない未来に顕在化してくるのをいち早く見抜いていたわけだ。

 アイシロンでは、従来型NASのようにコントローラーとディスクシェルフが分離しておらず、「ノード」と呼ばれるディスクアレイ装置にCPU、ネットワーク、ディスク、メモリのようなハードウェアのほか、ボリュームマネージャー、ファイルシステムなどのソフトウェアまですべてが搭載されている(図3)。導入時は、最小3台のノードでクラスターを構成すれば、ディスクを搭載した全ノードがコントローラーとしてふるまう。導入後は必要に応じてノードを追加すれば、容量と性能をリニアに拡大できる。

図3 NASコントローラーとディスクが一体化したスケールアウトNAS

 こうしたスケールアウトNASとしての機能を実現しているのが、同社の「OneFS」というソフトウェアである。

 従来のストレージアーキテクチャは、物理ディスクを管理するRAID、OSレベルでボリュームを扱うボリュームマネージャー、そしてファイルシステムの大きく3つの階層に分離していた。また、ストレージシステム内に複数のボリュームやファイルシステムがあり、管理に大きな手間がかかっていた。

 これに対してOneFSは、分離していたソフトウェアを統合。ファイルシステム全体のレイアウトを各ノードに提供し、すべてのノードにファイルを分散。単一ボリューム・単一ファイルシステムで管理するため、いくら容量が増えても、管理のシンプルなまま。また、完全分散型のアーキテクチャにより、高いパフォーマンスとデータの保護レベルを実現した。

容量だけでなく性能もアップ
信頼性ももちろん担保

 このOneFSを基盤とするアイシロンでは、容量が足りなければ、ノードを追加すれば自動的に容量が拡張される。これがまさにスケールアウトNASたる所以だ。アイシロンでは、最大144ノードの追加が可能で、15.5PBというとてつもない容量まで単一ボリュームのまま拡張できる。従来型NASが最大でも単一ボリューム100TBまでと考えると、いかに大容量かがわかるだろう。

 しかもノードの追加は1ノードごとに、システムを停止させることなくたった60秒で行なえる。筐体前面のボタンを押すだけで、面倒なボリューム管理やRAID設計なども不要だ。ノードが追加されたら、クラスター内のデータを自動的に再配置し、最適化・均一化する(図4)。まさに水を入れたら入れた分だけ、容れ物も増やせるという「大きなバケツ」。管理者やエンジニアが「こんなストレージがあったらいいな」という思い描くとおりの製品といえる。

図4 アイシロンにおけるノードの追加

 アイシロンは容量だけではなく、性能面での拡張性も十分だ。データ容量が増え、アクセス数や転送処理が多くなると性能も劣化してくる。つまり、ディスクを増設しても、処理能力が追いつかなければ、拡張性があるとは言えないわけだ(図5)。その点、コントローラーとディスクシェルフで構成されている従来型NASの場合、データへのアクセスが必ずコントローラーを経由するため、ユーザーが増えると、パフォーマンスも低下してしまう。

図5 従来型NASと比べ、アクセスは分散化される

 これに対してアイシロンは複数のノードがアクティブ-アクティブのコントローラーとして動作し、リクエストを分散処理するため、従来型NASのようにコントローラーがボトルネックにならない。さらに各ノードを追加すればするほど性能も向上し、最大で100GB/sという圧倒的なトータルスループットを実現する。

 ストレージの基本であるデータ保護や信頼性に関しても妥協はない。アイシロンが搭載するOneFSでは、ディスクアレイ装置で一般的なRAIDという概念がなく、ファイルを書き込む際に、データを分割し、パリティ(冗長化ビット)を付与。各ノードにストライピングして、分散配置するという処理を行なう(図6)。パリティは4つまで付けることができ、最大4ノードの同時障害に耐えうるようになっている。また、保護レベルをフォルダ、もしくはファイル単位で個別に変更できるため、重要度の高いファイルは4パリティで耐障害性を高め、プロジェクトが終了したら、オンラインのままパリティまで冗長度を下げ、耐障害性レベルを落とすという運用も可能だ。

図6 アイシロンでのデータの書き込み

容量と性能で選べる製品ラインナップ

高い拡張性を持つスケールアウトNAS「アイシロン」の最新モデル

 最新のアイシロンのスケールアウトNASでは、容量と性能のニーズにあわせて「Sシリーズ」「Xシリーズ」「NLシリーズ」の3つのプラットフォームが用意されている。

 Sシリーズは高いIOPSを求めるユーザーのためのハイパフォーマンスモデル。ランダムアクセスを伴なう、ミッションクリティカルなアプリケーションで利用できる。また、Xシリーズは容量とパフォーマンスのバランスを重視したスタンダードモデル。2UラックマウントのX200と4UのX400が用意されており、高速なSSDも搭載できる。そして、NLシリーズは、NL(ニアライン)という名称の通り、容量とコストパフォーマンスを重視したモデルとなる。

 前述の通り、アイシロンでは、最小3ノードから構成し、論理的に1台のNASとして動作させる。これらのプラットフォームノード同士のバックエンド接続に高速なInfiniBandを用いているのが1つの特徴だ。InfiniBandはHPC(High Performance Computing)やクラスタリングなどで用いられる高速・低遅延なインターフェイス。アイシロンのような大容量ストレージでの利用に最適といえる。

 また、フロントエンドのユーザー用には別途搭載されているギガビット(または10ギガビット)Ethernetポートが搭載されているので、既設のLANに参加させ、ユーザーがアクセスするマウントポイントを公開すればよい。こうした導入のシンプルさもアイシロンの大きなメリットといえる。

 さて、ここまででアイシロンの製品や技術概要について理解できただろう。次は製品選定で気になる、「実効容量とTCO」について説明していきたい。

(提供:EMCジャパン)

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