歴史の中で生まれた感覚、技術と時代の中で変わる感覚
“サイズ”について意外と知られてないこと
2012年09月28日 09時00分更新
「大事なお客さんには、いつも新しいトランプを開封することにしています」なんてセリフで、僕はマジックをはじめることが多い。そうすると、「これって、普通のトランプよりサイズが大きいですよね」とたまに言われる。
意外に知られていない、標準的なトランプのサイズの話
このようなやり取りはなぜ生じるのだろう。
じつは日本で普及しているトランプのサイズは“ブリッジサイズ”と呼ばれるもので、二つの世界標準のうちの小さいほう。僕が使っているのは“ポーカーサイズ”と呼ばれる大きなものだから。世界ではどちらかというと、大きなポーカーサイズのほうが流通量が多い。だから、「普通のサイズより大きい……」と言われるのは、僕にはちょっと微妙な感じ。ポーカーサイズが事実上の世界標準のサイズだからだ。
このポーカーサイズのカードが主流になった理由はカジノにあると言われている。
ブラックジャックやバカラなど、展開が早いゲームでは、ディーラー(胴元)がすぐに勝ち負けを判断しなくてはいけない。カードの面積が大きければ、数字やマークの視認性がいい。そしてギャンブルに付きもののイカサマを防げる。つまり手に隠しづらいギリギリのサイズになっているのだ。かといって、これ以上大きくすると、シャッフル(混ぜ合わせること)や配るのが難しくなる。
一方、ブリッジサイズは子供や女性も扱いやすいように小さめに作られたもの。
ティファニーなどで売られているブライダル用のトランプがブリッジサイズなのは「近隣の人とブリッジを楽しむような、平和な家庭を築いてね」という西洋の慣習からだという。おそらく、日本にトランプが輸入されたり、初めて製造されるときに「日本人は手が小さいから」なんて配慮もあったのだろうけど、日本ではこのブリッジサイズが、現在でも大きな顔をしている。
ちなみに、海外のマジックのコンベンションなどでブリッジサイズのトランプを使ってマジックをすると「なんで、子供用のトランプ使ってるの?」なんて、他のマジシャンに奇妙に思われることもある。マジックは人に見てもらうエンターテインメントなので、やっぱり見やすいポーカーサイズを使うマジシャンがほとんどだ。
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