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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第153回

TrinityやBrazos 2.0を6月に投入するAMDのデスクトップAPU

2012年05月28日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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デスクトップ向けTrinityは
6月に登場か

AMD Aシリーズの2011~2012年ロードマップ

 次にAPUの2012年を見てみよう。「Trinity」は2012年5月にまずノート向けが発表された。ところが事前説明資料の中には、すでに「A10-5800」というデスクトップ向け製品の型番が明示されている。

A10-5800とIvy Bridgeで、内蔵GPUでのゲーム動作時にどれだけフレームレートの差があるかというテスト結果。Ivy BridgeのデータはAnandTech.comが公開しているものを使ったそうだ

 では「このベンチマークを行なったときの構成は?」というと、
Benchmarking for 2012 A-Series APUs based on reference design and includes the AMD A10-5800K with AMD Radeon HD 7660G, screen resolution 1920x1080, 8G DDR3-1866 (Dual Channel) Memory and Windows 7 Home Premium 64-bit.
とあるだけで、これでは構成はわからない。とりあえずここで公式にアナウンスされているのは、以下の2点だけだ。

  • ハイエンドのCPUはA10-5800Kという型番
  • 内蔵するGPUはRadeon HD 7660Gという型番

 筆者が聞いた情報では、内蔵GPUは「Radeon HD 7660D」のはずで、これまでの名前のつけ方を考えると、「G」が付くとは思いにくい。これは事前説明会の資料の方が間違ってるのかもしれないと判断して、ロードマップ図ではRadeon HD 7660Dとしている。

 Trinity世代では、CPUコアはPiledriverベースで、GPUコアはVLIW4の「Radeon HD 6800/6700」の流れを汲むものになる、という話は連載142回などでも説明したとおり。現状のPiledriverコアは、同じ動作周波数の「Stars」コアに比べて性能でやや見劣りするのは否めず、同程度の性能を確保するためには、より高速に動作させる必要がある。まだA10-5800Kの動作周波数は明らかにされていないが、A8-3870Kと比べて性能面で見劣りしないためには、最低でも3.6GHz程度の動作周波数は必要と思われる。このA10-5800Kがハイエンドとなる。

 ここからややCPUの動作周波数を落として、倍率ロックもかけた「A10-5700」。CPUの動作周波数を引き下げるとともにGPUのシェーダーを若干無効化した「A8-5600」。そこからさらにCPUの動作周波数を下げた「A8-5500」の4製品が、2012年第2四半期にリリースされる予定だ。

 第2四半期といってもすでに5月も下旬であるから、実際には6月のリリースがほぼ確定である。タイミング的には、6月第2週に開催される展示会「COMPUTEX TAIPEI 2012」で発表されて、6月中に出荷開始というあたりではないかと推測される。

 Trinityは残念ながら、既存のSocket FM1とは互換性のない「Socket FM2」を採用する関係で、既存のマザーボードは利用できない。だが、チップセットは技術的には互換性がある。実際ノート向けのTrinityは既存の「A75」チップセットを利用しているからだ。デスクトップ向けには新しい「A85」チップセットを用意しており、これを搭載した製品も、やはりCOMPUTEX TAIPEI 2012のタイミングで出荷になりそうだ。ちなみにこのA85は、先述したAMD-1090FX/1070チップセットに近い構成で、USB 3.0対応に加えて、SATA 6Gbpsを最大8ポート搭載すると言われている。

 これに続き、おそらく第2世代のAMD FXとほぼ同じ8月くらいに、「A6-5400」および「A4-5300」が投入される。6月に投入されるのは、CPUが2モジュール/4コアの製品だけだが、このA6-5400/A4-5300は1モジュール/2コアである。ただこれはコアを無効化するだけで、ダイそのものは2モジュール/4コアのものと共通である。

 以前ならこうした形でコアの使い回しをすると、無効にしたコアのリーク電流に起因するスタティックな消費電力が問題になったが、最近はパワーゲーティング技術を使って電力供給そのものを断ち切っているので、スタティックな消費電力はほとんど問題にならない。あとは純粋にダイサイズが大きいことによる原価の高さのみである。

 これについてAMDは、「将来は1モジュール/2コアの製品と2モジュール/4コアの製品でダイを分けるかもしれないが、当面は同じままでいく」と明言している。既存のBulldozerとLlanoに加えて、PiledriverとTrinityという都合4種類のダイが、32nm SOIプロセス上で量産されている。ここでTrinityのダイを2種類にするのは、生産工程のスケジューリングなどを考えるとあまりやりたくないだろう、というのは容易に想像できる。

 ちなみに現状では、「TrinityをベースにしたAthlon II X4」の話はまったく聞こえてこない。これらに関しては、現行の世代が最後になるのではないかと想像される。

ローエンドのAMD Eシリーズは
Brazos 2.0でGPU強化&周波数向上

AMD Aシリーズの2011~2012年ロードマップ

 最後がローエンドである。現在は「Bobcat」コアベースの「Zacate」コアで「E-450」を投入しているが、こちらは「Brazos 2.0」というプラットフォームの更新が、やはり6月に予定されている。CPUコアそのものはBobcatのままだが、動作周波数を1.7GHzに引き上げ、さらにGPUをVLIW5からVILW4に切り替えたものが、「E2-1800」という型番で投入される。

 また同時に、E2-1800を1コア化して1.4GHz駆動としたものが、「E2-1200」として投入される。E2-1800はE-450の、E2-1200は「E-300」の後継にあたり、それぞれTDPは18W/9Wを維持する。しかも待機時の消費電力をさらに引き下げており、またGPUコアにTurbo COREを搭載したとされる。このZacate 2.0ベースの製品が「E2」の型番をつけたことで、既存のLlanoベースの「E2-3000」番台の後継製品は、少なくともTrinityベースでは当面予定しないようだ。

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