本連載でもたびたび取り上げているスマートフォン分野の特許訴訟がいまだ衰えない。今回は4月後半の動きをまとめたい。追跡しきれないほど、あちこちで話題が出ているスマホ特許訴訟だが、ポイントはAndroidだ。大きな流れとしては、完全に「Android陣営対それ以外」といえる。
Apple vs Android陣営の訴訟は各所で発生
現在のスマホブームをリードしてきたAppleは、Android端末を製造しているSamsung、Motorola Mobility、HTCなどと法廷で戦っており、同じくAndroidと競合するMicrosoftは、SamsungやHTCなど各社と特許クロスライセンス合意を進めながら、Motorolaとは正面から衝突している。
Microsoftは以前「Motorolaはクロスライセンス合意に応じない」と述べていたが、両者の対立は、Motorolaが間もなくGoogleの下に入るということも無関係ではなさそうだ。Google/Motorolaはアメリカと欧州の当局のゴーサインを得ており、まもなく取引完了といわれている。
まずはMotorolaが関連した動きからみてみよう。Motorolaは特許訴訟において、自社が保有する無線通信技術などの特許を盾にしてきた。同社が侵害されたと主張する特許の多くが、FRAND(Fair, Reasonable, And Non-Discriminatory;公平、合理的、かつ非差別的)といわれる条件でライセンスすることに合意した必須技術に関する特許だ。
これに対し、AppleとMicrosoftは法廷で、MotorolaがFRAND条項でライセンスしていないと攻撃するとともに、欧州委員会(EC)に苦情を申し立てた。ECは4月初め、Motorolaによる必須技術特許のライセンス状況について正式に調査を開始すると発表したばかりだ。4月はMotorolaとApple、そしてMicrosoftの戦いについて、アメリカで進展があった。
Motorolaの主張が認められた判定
ただし、最終的な結論はまだこれから
米国際貿易委員会(ITC)は4月第4週、対Microsoftと対Appleの2件のMotorolaの苦情について、初期判定を出した。2件とも、Motorolaが2010年秋に提出していた特許侵害苦情だ。
まずは23日に、対Microsoftについて、ITCの行政法判事(ALJ)はMicrosoftの「Xbox」がMotorolaの4件の特許を侵害しているとする見解を下した。このうちの3件がFRAND特許で、H.264動画圧縮方式に関するものが2件、無線LAN(IEEE802.11)に関するものが1件だ。Microsoftはたびたび、Motorolaが自社が保有するH.264特許利用についてMicrosoftには割高なライセンス条項を押し付けていると公に発言している。
そして24日、今度は対Appleでの初期判定が下った。ここでITCの行政法判事は、AppleがMotorolaの特許1件を侵害していると認めた。この特許は3G無線通信に関するもので、やはりFRAND特許である。Motorolaは苦情で4件の特許侵害を主張していたが、残りの3件についてはMotorolaの主張は認められなかった。
ITCと通常の裁判所とが異なる点として、貿易に関する委員会という性質上、ITCでは該当製品のアメリカへの輸入差し止め令を求めやすい点が挙げられる。ITCの判定プロセスは、ALJの初期決定の後、パネルが最終決定を下すという手順を経るため、今回の初期判定がイコール輸入差し止めにはならない。もちろん、MicrosoftもAppleもこの初期判定を不服とし、再審査を求めると思われる。特にAppleについては、今回Motorolaの主張を認めた3G特許はドイツでは侵害を認められていない特許とのことで、今後見解がひっくり返る可能性もありそうだ。欧州で進むMotorolaへの調査も、タイミングによっては影響を与えることになるだろう。
Motorolaの訴訟は、Googleによる買収完了もあり、特許保護がほしいAndroid陣営にとっては大きな意味を持つだろう。Androidの特許問題では、Google本体を攻撃しているのはOracleのみ。Oracleは、Sun Microsystemsの買収により手にしたJavaの特許や著作権を侵害しているとして、2010年8月にGoogleを訴えた。先に試みた和解協議がうまくいかなかったため、4月中旬にサンフランシスコで審理が始まっており、こちらの動向も注目される。
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