「Gumroad」はSNSを利用して画像や音楽データといった各種コンテンツを販売できるサービスだ。すでにASCII.jpでも、イラストレーターの寺田克也氏がGumroadを使って自身のデジタル原画を販売していることをお伝えしている(関連記事「作品データが売れる「Gumroad」、プロ作家から見たらどうなんだ」)。
既報の通り、Gumroadはシリコンバレーのスタートアップの中でも、とびきりホットなサービスとして注目されており、サービスがローンチされた後は日本国内でもTwitterを通じてその存在が知れることとなった。ASCII.jpでは今回、立ち上げたSahil Lavingia(サヒール・ラヴィンギア)氏にインタビューし、Gumroad立ち上げにまつわる逸話や将来的なプラン、現在のビジネスにまつわる環境について話を聞いた。
TwitterとFacebookを使ったオンラインコンテンツ販売
まずはあらためてGumroadについて解説しよう。ひと言でいえば「オンライン上であらゆるデジタルコンテンツを簡単に売買するシステム」だ。例えば自分が売りたい写真や音楽データなどがあったとして、それに価格とコンテンツのあるURL(ファイルのアップロードも可能)を指定すれば商品購入用のページが作成される。
Gumroadを立ち上げたLavingia氏は弱冠19歳でありながら、画像共有サービス「Pinterest」にデザイナーとして参画。そこでの経験を活かす形で単身独立の形でGumroadを立ち上げた。さらにGumroadのローンチにあたって110万ドルの資金を投資家から勝ち取っている。すでに「Ameroad」などGumroadにインスパイアされたサービスが立ち上がっていることからみても、その影響力がわかるだろう。
GumroadにはTwitterまたはFacebookのアカウントでログインできる。出品者は自身のアカウントで商品ページへと誘導するリンクを告知すればいい。もしこの告知を見て気に入ったユーザーがいれば、購入ボタンを押して基本的な個人情報とクレジットカード番号を入力するだけでいい。非常にシンプルだ。思い立ったら販売したいコンテンツを登録し、それをTwitterまたはFacebookで告知するだけ。面倒な手続きはいっさいいらない。
Lavingia氏がこのシンプルな仕組みでコンテンツ販売というアイデアを思いついたのは、Pinterest在籍中の2010年4月に
「自分の作った作品をオンラインで売ろうと思ったとき、思った以上に手続きが煩雑だった」
という経験による。例えばイラストや写真を1つ売ろうと思ったとしても、物の売り買いを仲介する「マーケットプレイス」に必要な情報を書き込んでページを作り、購入希望者とのやりとりを逐次行なう必要がある……こうした手順の複雑さが従来のマーケットプレイスの問題点の1つだと同氏は指摘する。思い立ったが吉日、同氏は1週間でGumroadの原型となるプロトタイプを構築したという。だがPinterestを抜けて新ビジネス立ち上げまで半年ほどの時間がかかり、数ヵ月の準備期間を経て、ようやく2012年2月でのサービス正式スタートへとこぎつけた。
コンテンツを手軽に、シンプルに売ることが信条
「Gumroadの思想はシンプルだ。売りたいものがあったら、そのリンクをTwitterに貼り付けるだけ。あとはコンテンツを気に入った自身のフォロワーがリンクをクリックしてその対価を払ってくれる。煩雑な手続きはいらず、だれもが楽しんで使えるサービスだ。イラストレーターからミュージシャンまで、さまざまなアーティストたちが専用の販売サイト構築や大規模なプロモーションを行わずとも、作った作品をすぐその場で販売(フォロワーに拡散)できる」(Lavingia氏)。
最近でこそ、Kanye Westなどオンラインでのプロモーションを積極的に行なうアーティストが登場してきているが、オンライン活動を中心に生計を立てるというのは比較的ハードルが高いと思われる。iTunesなどの大手サイトでもインディーズを支援する仕組みを積極的に取り入れたりしているが、まだまだこれからの分野だ。
「自分で本を書いて、それを売るというのはまだまだ自力では難しい。まず本を書き、それを本の体裁にして、仲介を行ってくれる出版社を探す。もしGumroadを使って自身のファン(フォロワー)に対して本(デジタルブック)を売ることができれば、こうしたハードルは下がるかもしれない」
とLavingia氏はいう。