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2年連続の女王戴冠なるか? 5年目のミクGTプロジェクト 第3回

すべてはミクZ4の勝利のために! 智将・大橋監督の戦略

2012年02月17日 18時00分更新

文● 末岡大祐/ASCII.jp編集部

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本格的に監督として動いた2011年

──勝てるパッケージングが決まって、2011年始まったわけですが、振り返ってみていかがでしたでしょうか?

大橋 最初は1~2勝はできるだろうとは思っていました。富士とかもてぎとかね。でも、思ったより雨が多かったのは想定外でした。雨になるとダンロップが速いので、そうなると#11 JIMゲイナー 458の独壇場になるわけです。もし全戦雨で、YOKOHAMAさんが雨にバッチリ合うタイヤを用意してくれないと100%勝てない。そういう意味ではシーズン前半はヒヤヒヤでしたね。後半になって、タイヤもいいものが投入されたりして、安心しましたけど、とにかく天候に左右されたという印象です。天候ばっかりはどうにもできませんからねえ。

 印象に残っているレースは鈴鹿ですね。谷口選手のスリック劇場で盛り上がったけど、ピットミスでドライブスルーペナルティーを受けたのがねえ。絶対あとから“たられば”が出てくるじゃないですか。もしあのミスがなかったら、とか。だから、ああいうレースをしちゃいけないんだって痛感しました。

 あとは最初のほうだと思うんですけど、同じRSファインがメンテナンスをしている#14 SGチャンギがトラブルで下位に沈んだことがあって、そちらにRSファインの河野さんが行っちゃったんですよ。まだ僕は監督業の勉強中だったんで、あれもうすぐピットインなんだけど……どうしろと(笑)。あれはシビれました。だって、エンジニアもサインボード出す人も、みんなこっち見てるんですよ。「わかってる?」みたいな。なんとかタイミング良くピットインをさせて、うまく送り出せたので自分グッジョブ! って(笑)。そこから、自分の采配に対して自信が持てるようになったんですよ。

雨の鈴鹿。ポイント圏外まで落ちてからの5位は良い成績に見えるが、本来ならありえないミスをしてしまったという後悔のほうが大きくのしかかった。事の重大さを、谷口選手の涙が雄弁に語っている

──具体的にはどのように戦略を練っているのでしょうか?

大橋 サーキットにはいろんな情報があります。テレビのモニターやラップタイムデータとか。セクタータイムとかベストラップとか、それが全車分見られるんです。このクルマがどういう状態で、誰が乗ってて、予選のときはこのタイムだったからこのくらいのペースで走ってくるだろう、ドライバー交代したらこのくらい伸びるかも、GT500がここで絡んでくるからこう交わすよな、と常に考えるんです。慣れるまでは頭の中がパンクしますよ。だから、見るところを決めないとダメなんです。今○○号車は誰が乗ってるんだっけ? なんて言ってられません。

 あとはドライバーに情報を的確に伝えないといけません。前と何秒差だからどうしろ、みたいな感じで。次に500が4台くらいこのコーナーでくる、とか詳細に教えないと意味がない。2010年にCOXさんの元で勉強させてもらって、2011年も河野さんに教えてもらって、ようやくわかってきました。いろいろ見ながらいろいろ考えられるのが、今ではとても楽しいですね。

イロモノチームをトップチームにまで引き上げた大橋監督。勝利のシャンパンの味は格別だったに違いない

──本業と監督の兼任は大変だったんじゃないですか?

大橋 そりゃもう!(笑) 本業の仕事の合間にスペアパーツどうするとか、次のテストどうするとか考えないといけないことが盛りだくさんなんですよ。本業の同業者にはGTの監督をしていることはあまり言ってませんしね。人によっては道楽と思われちゃいそうだし。

──監督業は大変かもしれませんが、監督をやってわかったこととかあったら教えてください。

大橋 例えばF1もそうなんですけど、お金をしっかりかけてるところは強いなと。GTもそうです。いいクルマ、いいドライバー、いいガレージがあって、身も心も温かいチームはゆとりもあるから、変な必死さがなくて勝利に近いですよね。あとはルールブックを統一して、途中で性能調整とかやめて、ちゃんとやりましょうよと。性能調整受けるから手を抜いて走っているように見えるのは、やっぱりファンからしてみれば面白くないですし。

──いわゆる三味線を弾くってことですね。たしかに露骨にそういうことがわかる走りをされると、ファンとしては萎えますよね。それでは、2012年はどのように戦っていくのでしょうか?

大橋 2011年いっぱいでGSRの取締役は退任させてもらいました。みなさんご存じの通り、今年は2台体制なので監督業に専念させてもらおうかと思って。クルマのことだけで手一杯なんで(笑)。今年は2台体制で、チームの総監督と0号車の監督をさせてもらいますが、はたして連覇はなるのか? 期待していてください。

──どんな采配で強敵たちと戦うのか、楽しみにしております! ありがとうございました。

次回予告:いまやGSRに欠かせない看板ドライバー、番場選手インタビュー

 理想を現実とするために、常に冷静に状況を判断し、的確な作戦を練る大橋監督。クールでクレバーに見えて、その実、勝利に対する激情を秘めていた。次回は、GTのシートを失ってからGSRで華麗に復帰し、チャンピオンまで上り詰めた番場選手にそのサクセスストーリーを聞く。

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