2012年は防衛戦の年!
──シリーズランキング1位になっていかがでした?
鈴木 うれしかったですが、ここから気を引き締めないとな、と。GT300クラスのチーム全体から追われる立場になったわけですし。このとき、初めてBMWの本社からお声がかかったんですよ。BMWジャパンを通じて、ちょっと話を聞かせてほしいと。Studieやって17年目にして、初めてBMWから呼ばれました(笑)。BMWジャパンからは「君たちが考えているより、ドイツ本社ではオオゴトになってるよ」って。「シーズンを勝ち取ってください」って言われました。これで、さらに気合いが入りましたね。
──私もミクZ4参戦当初(2008年)に、BMWジャパンにコメントをもらおうとして断られたことを思い出しました(笑)。その広報の方は「個人的には応援している」と言ってましたが……。さて、2年ぶりに帰ってきたオートポリスですが、ちょっと残念な結果でしたね。
鈴木 あそこ(オートポリス)が正念場だとは思っていたんですよ。Z4向きじゃないコースですしね。このときは#11しか見てなかったですね。あのクルマ(#11 JIMゲイナー 458)はLM-GTE規格(ル・マン24時間耐久レース用の規格)だから、足回りも本格的なレースカーなんですよ。オートポリスみたいなコーナーが連続するサーキットだとタイヤのタレ具合が(GT3車両と比べて)明確なんです。GT3規格はあくまでも市販車の足周りなんで。100kgのウェイトを積んで、それでも2位に入ったライバル(#11)はホントにすげえなあと(笑)。われわれが9位だったことよりも、#11が2位に入ったことのほうがショックで……。年間のワーストレースがよりによってあのタイミングでくるなんてなあ。もうちょっとレースをまとめられると思ったんですけどねえ……。
──レガシィB4とか紫電とか、JAF勢も速かったですもんね。そしてついに、運命の最終戦です。
鈴木 オートポリスで逆転され、5ポイントの差が開いてしまって、チームは落胆ムードでしたが、僕はそうでもなかったんですよ。まだ何か起きるだろうと。これまでも結構ドラマチックだったし、最後の最後でまたドラマが起きるんじゃないかと(笑)。むしろ気合いマックスでした。常に「INOKI BOM-BA-YE(炎のファイター)」が頭の中で流れてるような。
でも、予選日の朝から結構強い雨が降ってて、それでさらにみんな落胆しちゃって。雨になると#11とダンロップが強いですからね。この最悪の流れを一気に変えたのが、YOKOHAMAさんが持ってきたウェットタイヤです。あまりのタイムの速さに「あれ? もしかしてポール獲れる?」みたいな。
──朝、プレスルームに入って、タイミングモニターのタイムを見たときに目を疑いましたよ。
鈴木 予選が終わって、Z4が1位で#11が2位なんて、やっぱりドラマが用意されてたじゃないですか。最終決戦で最高のお膳立てですよ(笑)。しかし、ライバルもニューエンジンに換装するとか、本気で勝ちを獲りに来てましたから気は抜けなかったですけどね。決勝は晴れたから、ニュータイヤのドライ路面のデータがないのも不安材料でしたし。
──決勝では今シーズン初の番場選手がスタートでしたね。
鈴木 番場選手スタートというのはこれまでも作戦として挙がってたんですが、なかなかチャンスがなくて。でも彼はもてぎが得意なのをわかっていたので、オートポリスみたいなことはないだろうと。実は、谷口選手からの提案だったんですよ。ポールだから前に他のクルマはいないし、GT500が来るまで数周あるし、#11はタイヤの暖まりが遅いから、1コーナーさえ抑えればあとは抜かれないだろうと。見事の期待に応えてくれましたよね。
──1位で出て行って1位で戻ってきましたもんね。そのあとの谷口選手はまったく危なげなかったですね。
鈴木 これまでチャンピオンをあとちょっとで獲り逃してきた谷口選手だけに、最後は自分で走りたかったのかなあ。「番場が何位で戻ってきても、俺がなんとかしてやる」っていう、ちょっと人間臭い部分があったのかもしれません。別に番場選手を信用してないってワケじゃなくてね(笑)。
唯一の不安だったのがドライバー交代。これまで谷口→番場はあっても、その逆は初めてでしたからね。でもそれも杞憂でした。後半は#33 ハンコックがちょっと速かったけど、それも問題にならないくらい谷口選手の走りは完璧だった。
──これまで3年半、4シーズン戦ってきて初のシリーズチャンピオン。今の気分はいかがですか?
鈴木 最初はいろんなことが思い浮かんできて、整理がつかなかったですね。実感も全然湧かなくて。もちろん、喜んだし泣いたし大騒ぎしたけど、実感が出てきたのはもっと後ですね。落ち着いて、ちゃんと考えられるようになったときが実感できたときというか。シーズン終わってから2~3週間くらいかかったかなあ。今はもう2012年のことで頭がいっぱいですが(笑)。
──それでは、防衛戦となる今年の意気込みを聞かせてください!
鈴木 思ったより早くチャンピオンになれましたが、やっぱり2連覇でしょう! さらにその先があれば、3連覇かGT500クラスに行きたいですね。海外のレギュレーションとの摺り合わせもあるとは思いますが、BMWが出られるレギュレーションになれば、M3とかでGT500に出たいですね。みなさん、ぜひ応援お願いします!
次回予告:クールでクレバーな辣腕家、大橋監督インタビュー
チームの立ち上げからかかわってきたからこその苦労が絶えなかった鈴木代表。その胸の奥にある燃える闘魂は、今年も爆発してくれるに違いない。さて、次回は監督就任2年目にしてチャンピオンを獲った、おおはっさんこと大橋逸夫監督に話を聞く。
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