このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

NAVERまとめへの広告配信停止から見えて来るもの

2011年10月04日 16時00分更新

文● まつもとあつし

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

インセンティブと品質とのバランスをどう保つか?

 冒頭で紹介したように、NAVERまとめはまとめを作成したユーザーに広告収益やアフィリエイト収益を分配することで、その労力に応える仕組みを整備した。これによって、今年4月には訪問者数が700万人を越えるなど、急速に成長している(関連記事)。この数字はTogetterやnanapiといったキュレーション系のサービスを大きく上回るものだ。

ネットレイティングス株式会社のインターネット利用動向調査「NetView」2011年4月データより

 しかし、今回のAdSense広告配信停止は、その成長エンジンとも言える収益分配について、そのリスクを明らかにしたことも事実だろう。最初に述べた著作権の問題、あるいは、収益を至上目的とした場合は、同じ労力でもより多くの見返りが得られるコンテンツを選ぶユーザーも出てくるような点についてネイバーがどう対応していくのかが注目される。

 Youtubeでも収益分配を受けることができるパートナープログラムを設けているが、コンテンツの内容について一定のポリシーに従うことが求められるのはもちろん、申込時にある程度の視聴者を集めていることも条件にあげている。ユーザーから投稿される内容を巡回監視したり収益分配を行う際、その範囲をある程度絞ることでそのパフォーマンスを上げているという側面もあると考えられる。今後、キュレーション型のサービスは、このような資格認証的な仕組みを設けるなどの工夫も必要ではないだろうか。

 なお、奇しくも今回の問題が持ち上がるのとほぼ同じタイミングでヤフーも、まとめサービス『Yahoo!くくる』を開始している。こちらは収益分配の仕組みを取らず、「喜びと感動を分かち合う」というコンセプトのもとサービスを運営していくという。

9月28日にスタートしたYahoo!くくる

 Googleが提供するようなロボット型の検索とは、また異なる価値を提供するキュレーション型のサービスはまだ各社とも試行錯誤の段階だ。今後どのような発展を遂げていくのか注目していきたい。

著者紹介:まつもとあつし

ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。ネットコミュニティーやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、コンテンツのプロデュース活動を行なっている。DCM修士。『スマートデバイスが生む商機 見えてきたiPhone/iPad/Android時代のビジネスアプローチ』(インプレスジャパン)、『生き残るメディア 死ぬメディア 出版・映像ビジネスのゆくえ』(アスキー新書)も好評発売中。Twitterアヵウントは@a_matsumoto

 最新刊は、スマホやタブレットを用いた次世代の読書作法を解説する『スマート読書入門』。技術評論社より発売中。

■Amazon.co.jpで購入

前へ 1 2 3 4 次へ

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ