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「コンテンツファースト」で考えよう!

お祭り騒ぎで終わらないためのスマホ対応とは?

2011年09月28日 11時00分更新

長谷川恭久、藤原正平

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Web制作会社のロフトワークが、今さら聞けない!?企業のスマートフォン対応というテーマの無料セミナーを2011年10月12日に開催する。今回は事前座談会として、ロフトワークの君塚美香氏をモデレーターに、『スタイルシート・スタイルブック』『Web Designer 2.0』の著者であり、セミナーのゲストスピーカーを務める長谷川恭久氏と、ロフトワークのチーフプロデューサー藤原正平氏の2人が対談したときの様子を紹介する。

「社長が言い出した」で始まるスマホ対応は危険

長谷川恭久氏

――多くの企業がスマートフォン対応を迫られています。しかし、企業にとってスマートフォンサイトがどのような役割を担っているか、についてはほとんど議論されていません。

長谷川恭久氏(以下、長谷川):そもそもスマートフォンユーザーは本当に増えているのでしょうか? まずは、そこから議論すべきです。スマートフォンを必要だから買う人たちばかりではなく、流されて買う人たちも増えています。ノリで変えちゃった人は、スマートフォンとのコミュニケーションに対して計画性がないので、フィーチャーフォンで築き上げられた関係がなくなっていることへの失望感が大きい。そうなると、フィーチャーフォンに戻りたくなる人もいるわけです。

 企業の側も、闇雲にスマートフォン対応を急いでいる状況があります。戦略的ツールとしてスマートフォンサイトがなければ、おそらくそれは本当の意味での対応ではない。ビジネスとしてのプランニングや明確なゴールがなく、流行りだから作るのは一番危険です。これまでWebサイトを通じてどんな顧客とどんなコミュニケーションをしてきたか。まずはそこに立ち返り、その上でスマートフォンサイトを作るかどうかを考えるべきです。

――スマートフォンサイトに限らず、「とりあえずやってみて、結果が出ないからやめる」という話はよく耳にしますよね。制作側としてはどんなことを感じていますか?

藤原正平(以下、藤原):ソーシャルメディアやスマートフォンといった領域に船出すると、新しいお金が転がり込んでくるイメージがあります。特にトップダウンで社長が決めたケースでは、プランもないまま投資する企業があります。しかし実際は、スマートフォンに対応する意味がある業種は、ある程度限られるでしょう。たとえば飲食業は顧客とのコミュニケーションが売上に直結します。お店の場所が探せるとか、お店に行った人がクーポンを提示できるとか、採算が見えれば投資もしやすいです。

長谷川:ソーシャルメディアを活用すれば顧客との接点が増やせますが、ばら撒きツールのひとつとしてしか見ていないと、ソーシャルメディアの活用まで踏み出せない。結局ところソーシャルメディアを最も活用すべきなのはカスタマーサービスで、生身の人と人とのコミュニケーションにソーシャルメディアを活用すれば、大きな効果が得られるはずです。そのとき、スマートフォン対応は欠かせないでしょうし、もう少し戦略的な意味での「スマートフォン対応」ができるはずです。

代理店丸投げではうまくいかないスマホとソーシャルメディア対応

――「スマートフォンに対応しよう!」と決断したとき、企業担当者が直面する課題はなんでそうか?

ロフトワークの藤原正平氏

藤原:どんなサイトを作るべきか考える際に、どんな顧客とどんなコミュニケーションをするべきか仮説を立てるわけですが、広報とマーケでは見方が違うんですね。マーケの人は日頃から試行錯誤に慣れているので、手法はいろいろ思いつく。でも、会社の活動をパッと広めることに長けている広報の人は、ターゲットがフォーカスされた瞬間、どうコミュニケーションすればいいかがわからない。それで、普段から付き合いのある広告代理店に「スマートフォン対応したいから、方法を提案してほしい」と、ざっくり投げてしまうわけです。

長谷川:だから結局お祭り系の企画書しか上がってこない。パッと盛り上げて、楽しかったよね、みたいなことができれば成功としてしまう。つまり、一本一本の細かいコミュニケーションに慣れていないという問題がひとつ。もうひとつは、フィードバックに慣れていない問題です。今や、大企業すら、人と人との対話を当たり前にやらなければいけない時代です。「お祭り騒ぎ」も悪くありませんが、真面目に顧客と対話できる体勢づくりも一緒に進める必要があります。

――ユーザーのコンテキストにどう踏み込んでいくかを考える、ということですね。それはリアルの世界での会話と一緒のような気がします。

スマートフォンサイトでは、平等を捨てろ!

――作ると決めたら構築です。PCサイトのスマートフォン対応を考える際のポイントを教えてください。

長谷川:「捨てる勇気」ですね。PCサイトには、いろんな可能性に対応するための広さや深さがあります。すべての部署のために、コンテンツを乗せる場所を平等にも用意できます。それが全部なくなるのがスマートフォンサイトです。スクリーンサイズが圧倒的に小さいし、今後定額パケットがなくなるかもしれない状況も考えると、余計に無駄なことができません。コンテンツも、部署も、コンセプトも全部平等じゃなくなるのがスマートフォンサイトです。

――PCサイトの一部を切り出すのではなく、まず「プライオリティはどこ?」から突き詰めてスマートフォンサイトを作る、ということですか?

長谷川:そうです。今の構造はあくまでもPCサイト内で完結するように構造化されたものですから、まずはそこを崩して考えてみましょう。「コンテンツファースト」の考え方も重要です。

パンフレットや雑誌広告など他媒体でコンテンツを作っているから簡単にできると思って、コンテンツ作りは制作行程の後回しになることもありますが、実は最も時間がかかります。特に今の情報の流れを考えると、顧客とのコミュニケーションにおいて明確なプレゼンスを保つだけのコンテンツを作り、それを忘れ去られないように常に更新していくのは、非常に難しいです。それには時間もかかるし人材も必要です。そういう意味で、コンテンツを先に考えるのは正しいことだし、とても重要な作業なのです。

スマホ対応に向いているのはカスタマーサービス部門

――最後にズバリ、お祭り騒ぎで終わらせないための成功の秘訣は?

長谷川:“細く、長く”運営していくことですね。何事もそうですが、続けないと効果は現れません。ですから、運営をどうするかも重要な問題です。スマートフォン上のコミュニケーションは、どこで、どんなデバイスで、どんな目的で、というユーザーのコンテキストの理解から始まります。したがって、マスで捉えるのではなく、個人個人に対して何が提供できるのか。それを考え、実践していかなければなりません。

したがってスマートフォンサイト対応は、本来、マーケターではなく、経験もありコミュニケーションの仕方を熟知しているカスタマーサービスの人がリーダーになるべきだと思います。それぐらいスマートフォンサイトは人に近いメディアであり、直のコミュニケーションが必要なのです。果たして、組織としてこうしたコミュニケーションに対応できるのかどうか。できないのであれば、わざわざスマートフォンサイトを作らずに、Twitterアカウントを取って、そこで練習を積むのもひとつの方法でしょう。

藤原:コンテンツファーストの話にもつながりますが、組織の観点では、クライアント側に企業が一貫してやってきたことや企業理念に基づいてコンテンツを作ったり考えたりする人がいないと続きません。実際に文章が書けなくてもいい。こういう人にしゃべらせて、こういうメッセージを出しましょうと考えたり、そのために動けたりする人が必要です。新しい施策にチャレンジするときは、現場のリーダーに決裁権が与えられていることも重要です。

長谷川:スマートフォン対応には、テクノロジーやデバイスなど、これから新しく出てくる要素が多い中でやらなくてはいけません。答えがなくて当然。いかに柔軟に動き続けられるかもポイントです。

――なるほど。まだまだ発展途上にある中で、今何ができるのか、すべきなのか。多くの担当者が悩まれるのもわかりますね。10月12日のセミナーではそのあたりを踏まえて、まずはロフトワークの藤原から担当者が直面する課題を整理して解説、長谷川さんにはスマートフォン向けの新しいコミュニケーションデザインのあり方についてお話しいただき、最後に弊社のクリエイティブディレクターからスマートフォンサイト構築のフレームワークを紹介する予定です。さまざまな悩みを抱える企業の担当者にとって、このセミナーが一歩でも前進するきっかけになればと願っています。

長谷川恭久氏

デザインやコンサルティングを通じてWebの仕事に携わる活動家。 アメリカの大学にてビジュアルコミュニケーションを専攻後、マルチメディア関連の制作会社に在籍。日本に帰国後、数々の制作会社や企業とコラボレーションを続け、現在はフリーで活動。
自身のブログとポッドキャストではWebとデザインをキーワードに情報発信をしているだけでなく、各地でWebに関するさまざまなトピックで講演したり、多数の雑誌で執筆に携わったりしている。著書に『スタイルシート スタイルブック』『Web Designer 2.0 進歩し続けるWebデザイナーの考え方 』など。

藤原正平氏

株式会社ロフトワーク チーフプロデューサー。大学卒業後、大阪の広告代理店に入社。幅広いクライアントの広告プロモーション企画、制作物の制作ディレクションに携わる。2004年にフィリップモリスジャパンに入社。中国エリアのマネージャーに就任し、販売シェアを160%拡大。2006年にロフトワークに入社。プロデューサーとして、企画力・調整力を駆使し数々のプロジェクトを成功に導く。

10/12開催セミナー
「いまさら聞けない!? 企業のスマートフォン対応 ~稟議に使える戦略、実装ケース、予算、求める成果とは!? ~」

日時
2011年10月12日(水) 14:30~17:40
主催
株式会社ロフトワーク
会場
外苑前TEPIA(東京・港区)
定員
100名
参加費
無料
対象
  • 企業のマーケティング・広報担当者・マネージャー
  • 経営企画担当者

■プログラム

企業のコミュニケーション戦略を成功に導くスマートフォンサイトについて先端動向成功の条件、スマートフォンサイト構築の考え方について紹介します。

スマートフォン対応をしたが成果がでない、スマートフォンサイトの構築を検討しているが何から進めるべきかわからない、PCサイトとの連携はどうすべきか…等、お悩みのご担当者様は必見です!



※申込みは、ロフトワークのセミナー案内ページから。

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