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“ソーシャルメディア・マーケティング”がなくなる日

2010年06月14日 10時00分更新

文●小橋川誠己/Web Professional編集部

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 Twitterに代表される「ソーシャルメディア」を活用する動きが盛んだ。国内でも大企業を中心にTwitterアカウントを取得する企業が相次ぎ、短期的なキャンペーンにTwitterを活用する事例が出てきている。

 こうした動きに異を唱えるのが、トライバルメディアハウスのSMMアナリストであるイケダハヤト氏だ。「ソーシャルメディアを使う上では、中長期的なファンベースの拡大という視点が必要だ」と主張する同氏に、日本企業のソーシャルメディア活用の現状と海外との違いを聞いた(聞き手はWeb Directions East代表の菊池 崇氏、アスキー総合研究所の中西祥智)。

イケダハヤト氏

トライバルメディアハウス SMMアナリスト イケダハヤト氏


――日本でもTwitterアカウントを取得して、ソーシャルメディアを活用しようという企業が増えてきています。

イケダ氏:確かにTwitterアカウントを持つ企業は増えています。しかし実態としては「Twitterを使う目的」を明確にしないまま「競合が始めたからとりあえずウチも」といった企業が多いと見ています。もちろん中には先進的な企業もあるので一概には言えませんが、大半はTwitterで何をしたらいいの? Twitterをどうやって使ったらいいの?――といったレベルで悩んでいるようです。

 一方、海外の情報を見る限り、特に米国では「ソーシャルメディア・マーケティング」という言葉はあまり使われなくなっているように感じます。企業のマーケティング活動の中にソーシャルメディアが当然のように組み込まれていて、ソーシャルメディアの役割が明確に定義されているからなのでしょう。翻って日本ではまだマーケティングのポートフォリオの中に、ソーシャルメディアが組み込まれていない印象があります。


――ソーシャルメディアの“使い方”にも違いがあるのでしょうか?

イケダ氏:米国の場合、ソーシャルメディア・マーケティングは中長期的な視点で実施されます。短期的な視点の活用がまだ多い日本との違いです。ソーシャルメディアユーザーの規模や浸透度の違いも考慮するべきでしょうね。

 そもそもソーシャルメディアの何が画期的なのか。たとえば私が昼食にマクドナルドでハンバーガーを食べたとしましょう。「マックでハンバーガー食べた」とわざわざブログやWebサイトに書き込む人などいませんよね。ところがTwitterでは違う。企業から見れば「消費者のつぶやき」に新たなタッチポイントが生まれるわけです。

 お客様とのタッチポイントが生まれたら次にやるのは関係を築くことです。ソーシャルメディアを通じて、お客様と積極的に対話していく。そうやって中長期的なファンベースを拡大していけるのが、ソーシャルメディアの大きな魅力です。

 一方で日本の場合は、ファンの固定化を意識していない短期的な「キャンペーン」が多い。Twitterはまだまだユーザー数が少なく、テレビCMのような認知向上効果は望めません。ソーシャルメディアでバイラルが生まれること自体は否定しませんが、企業のリソースは限られていますから、認知向上のみを目的としたキャンペーンは優先順位としては低くなるはずです。


――フォロー関係にないTwitter上の発言にも企業が積極的に介入していく、ということですか?

イケダ氏:そうです。自社宛てではない(@が付いていない)Twitterの書き込みであっても、お客様の疑問に対して積極的に回答する「アクティブサポート」を実施する企業が出始めています。

 たとえば、米サウスウェスト航空ではTwitterやFacebookの書き込みを担当者が実際にモニタリングしています。「何かつぶやいておけば答えてくれるだろう」とお客様側が期待すると聞きます。すでにカスタマーサポートの1つのチャネルとしてソーシャルメディアが浸透しているのでしょう。

 日本ではまだカスタマーサポートの視点でソーシャルメディアを活用している企業は少ないですが、今後はこうした動きが進んでいくでしょう。たとえばデルの日本法人ではTwitter上で自社製品の疑問に回答しています。ちなみに当社でも社名をモニタリングして、必要に応じて返事を書いています。


――そうなると、企業側の体制や担当者の力量が問われますね?

イケダ氏:具体的なやり方は企業によって違いますが、米国では「ソーシャルメディア・マネージャー」という職種を置く企業も出ています。求人サイトをのぞくと専門職として募集されていることもあります。

 ソーシャルメディア・マネージャーは企業のソーシャルメディアへの取り組みを集約する役割を担う人物です。何か問題があったときに対応するのはもちろんですが、オンラインコミュニティを盛り上げるプロフェッショナルでもあります。現在のところ日本でソーシャルメディア・マネージャーに近い職種を置いているのはマイクロソフト(日本法人)ぐらいだと思いますが、そうした動きは今後、日本でも広がっていくのではないでしょうか。

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 Web Professional編集部は、Web Directions East、アスキー総合研究所と共同で、ソーシャルメディアをテーマにしたセミナー企業Twitterは誰が使うべきかを6月18日に東京都内で開催します。本記事に登場したイケダハヤト氏のほか、海外事例に詳しいパワーレップの笠井孝誌氏、先進企業の担当者としてマイクロソフトの熊村剛輔氏、日本IBMの栗原 進氏、NECの野坂 洋氏をお招きし、企業のソーシャルメディアの運営方法について研究します。

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