ネットワークがクイズでわかる! 誰が正解?「TCP/IP」 第7回
伝送規格と通信モードを自動判別する機能の意味を知ろう
スイッチのオートネゴシエーションは何をしてくれるの?
2011年09月14日 09時00分更新
クイズ「誰が正解?」の時間がやってきました。このクイズでは、ケンイチ君、いずみちゃん、竹田君の3人が私の質問に答えます。ただし、正解なのは1人だけですよ。クイズのテーマは「TCP/IP」、ネットワークの基本です。さてさて、誰が正解か当てられますか?
誰が正解?(間違いが2人いますので要注意!)
さまざまなEthernetの規格
LANで用いられるEthernetは、すでに30年の長い歴史を持つ規格である。時間の流れとともに高速化を続け、トポロジやアクセス制御の異なる規格が数多く世に送り出されてきた。また、伝送媒体も銅線と光ファイバケーブルがあり、さらに銅線でもUTPケーブル、STPケーブル、同軸ケーブルなどいくつもの種類がある。
そして、現在のLANで通常使われるのが、引き回しの楽なUTPケーブルを用いたEthernet規格だ。しかし、このEthernetの規格も、伝送速度では10Mbpsの10BASE-T、100Mbpsの100BASE-TX、そしてギガビット(1Gbps)の1000BASE-T、より高速な10GbE(10 Gigabit Ethernet)やさらに高速化を進めた後継規格など、複数の規格が用いられている。最新のPCであれば、ギガビットEthernetをサポートしていることが多いが、少し古いスイッチなどはサポートが100BASE-TXまでという製品も多い。一方で、ネットワークプリンタや古いNICを持つPCなどで、10BASE-Tしか利用できない端末も少ないながら存在する。
これらの伝送速度のほか、半二重通信と全二重通信という通信モードの違いもある。CSMA/CDとリピータハブを使った伝統的なEthernetでは、端末側では送信と受信のいずれかの処理しか行なわない。リピータハブでは媒体を共有するため、同時にフレームを送受信するとフレームの衝突(コリジョン)が起こってしまうからだ。これを半二重通信と呼ぶ。しかし、スイッチングハブを用いて、各端末同士を論理的に直結してしまえば、媒体を占有できる。媒体を占有すればフレーム同士が衝突することはなくなるため、送受信を同時に行なう全二重通信が利用できる。
またこれに伴い、フロー制御のやり方も変える必要が出てきた。フロー制御とは、パケットの流量が多すぎ、バッファがあふれてしまう前に、送信量を調整してもらうための機能だ。半二重通信では、コリジョンを検出した際に出すジャム信号を送信元に送って送信を中止する。一方、コリジョンの検出が不要となる全二重通信の場合は、PAUSEフレームという専用のフレームをマルチキャストすることで、送信を抑制するのだ。
Ethernetはこのように、いくつもの伝送規格と通信モードを持っている。そのため、PCとスイッチ間では、これらをきちんと統一させる必要がある。
オートネゴシエーションの役割
こうした処理を自動化するのが、オートネゴシエーションである。オートネゴシエーションに対応したNICとスイッチであれば、ケーブルをつないだ段階で、FLP(Fast Link Pulse)バーストと呼ばれるリンクチェックフレームを使って、お互いがどの通信モードをサポートしているかを交換する(図1)。そして、サポートしている通信モードの中でもっとも高速なものが通信に利用される。
オートネゴシエーションは便利だが、以前はトラブルの元になることも多かった。機器の組み合わせによっては折衝がうまく行かず、リンクが確立できないといったトラブルもあった。また、相手がオートネゴシエーションをサポートしていない場合、低速な10BASE-Tの半二重にしてしまうという実装も多かった。
こうしたことを避けるため、企業向けのスイッチでは、通信モードを固定するためのディップスイッチを搭載している製品も多い。また、WindowsのLANカードの設定でもオートネゴシエーションを使わず、モードを固定することが可能だ(画面1 )。ただ、現在ではほとんどのNICやスイッチはオートネゴシエーションに対応しているため、こうしたトラブルは少なくなっている。
ということで、正解はいずみちゃん。ケンイチ君が説明しているのは、いずみちゃんのいうとおり、DHCPのこと。竹田君がいっているストレートケーブルとクロスケーブルの自動識別機能は「AutoMDI/MDI-X」で、オートネゴシエーションとは異なる。
本記事は、ネットワークマガジン2007年8月号の特集1『クイズでわかる 誰が正解?「TCP/IP」』を再編集したものです。内容は原則として掲載当時のものであり、現在とは異なる場合もあります。 |
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