Facebookの創業時の話を描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」が公開中だ。
ゴールデングローブ賞主要4部門を受賞したほか、執筆時点で106の賞を受賞し、アカデミー賞にも8部門でノミネートされるなど、高い評価を受けている。
面白いのは、映画中に、Facebookや同社CEOマーク・ザッカーバーグなど、実在の企業や人物が実名で登場するところだ。
見ている側としては、どこまでが真実なのか、実在の人物を出して問題はないのかが気になってしまう。
何しろ、日本版ポスターのコピーは、「天才 裏切り者 危ない奴 億万長者」だ。真ん中二つは、どう見ても誉めているとは思えない。
映画が描く世界について、配給元のソニー・ピクチャーズエンタテインメント映画マーケティング部パブリシティ室東浜由晃氏に聞いた。
普遍的なテーマを描いた青春群像劇
筆者が「Facebookの映画化」と聞いてまず思ったのが、実在のウェブサービスを映画で取り上げることへの驚きだった。しかも、監督はあの「セブン」「ファイト・クラブ」で知られるデヴィット・フィンチャー監督だ。Facebookの米国での影響力の大きさは知っているつもりでいたが、改めてそのすごさを実感させられる。
ただ、映画自体は非常にオーソドックスな内容だ。一番有名なのが監督。日本で知名度がある俳優は、ショーン・パーカー役のミュージシャン・ジャスティン・ティンバーレイクくらいか。アクションシーンもなく恋愛ドラマでもない。派手さのまったくない映画だ。
映画中では、Facebookの技術的な側面はそれほどクローズアップされていない。パソコンの画面が大写しになることもほとんどなく、大学のサイトをハックするシーンでマーク・ザッカーバーグがつぶやいている専門用語が印象に残るくらいだ。
内容としては青年の友情や嫉妬、裏切りなどをテーマとした普遍的な青春群像劇に仕上がっていて、Facebookはあくまで舞台装置のひとつに過ぎないことを感じる。「Facebookの映画」と思ってみると多少肩すかしを食らうかもしれないが、ウェブサービスの描写にこだわりすぎると一般視聴者には敷居が高くなってしまうのでこれくらいがちょうどいいのかもしれない。
ストーリーはあくまで「オリジナル」
実在の企業や人物を扱った映画だが、どこまで実際の出来事に即しているのだろうか。
「映画はあくまで“オリジナル”」と東浜氏は語る。原作は、映画にもなった「ラスベガスをぶっつぶせ!」も手がけたベン・メズリックの「facebook」という本だ。きっかけは、わずか14ページの企画書をベン・メズリックがアーロン・ソーキンに持ち込んだこと。原作が完成する前に映画化が決定し、脚本家アーロン・ソーキン、監督デヴィッド・フィンチャーという豪華なメンバーで映画化が進められたのだ。
ちなみに、日経BP社から邦訳も出ているデビッド・カークパトリック著「フェイスブック 若き天才の野望」の方は、主にマーク・ザッカーバーグほかのインタビューから成り立っており、マーク・ザッカーバーグ視点の内容となっている。ベン・メズリックも共同創業者で2005年にマーク・ザッカーバーグを訴えたエドゥアルド・サベリンをはじめ関係者に数多く取材したというが、マーク・ザッカーバーグには取材を断られており、サベリン視点の本となっている。両方の著作を比べると、ザッカーバーグとサベリンの認識の違いが楽しめるかもしれない。
とは言うものの、映画が事実に基づく内容を元に作られていることは確かだ。一体どこが事実に基づく内容でどこが虚構なのかをまとめてみよう。
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