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Apple Geeks 第18回

ソニー「SNAP」採用のOPENSTEP互換環境「GNUstep」

2010年11月30日 12時00分更新

文● 海上忍

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GNUstepを試すならLive CDで

 このように、GNUstepはOSとしてのOPENSTEPのクローンではない。そもそもカーネルは含まれず、OSとしての体裁は整っていないため、他のOSの上位レイヤーとして稼動させることになる。OPENSTEP Enterprise for Windows NTと同じ……というよりは、DarwinとCocoaの関係を思い出せば理解しやすいだろうか。

 このためGNUstepプロジェクトは、スクラッチからOPENSTEP APIの実装を進めるとともに、NeXTライクなインターフェースを持つGUIの開発も進めてきた。APIの実装が主とすればこちらは従であり、高い完成度とは言い難いものの、ワークスペースマネージャ(Mac OS XのFinderに相当)のクローン「GWorkspace.app」など、NeXTを感じさせるGUIもある。

 GNUstepの実行環境は、「GNUstep Base」と呼ばれる基本フレームワーク部分と、GNUstepアプリケーションを構築するためのMakefileコレクション「GNUstep Make」、Objective-Cのランタイムライブラリー「libobjc」などのパッケージで構成される。コンパイルにはffcallやiconvといったライブラリーも必要なため、導入までの難易度は高いといっていい。

 幸い、GNUstepにはいくつかのディストリビューションが存在する。ひとつは「GNUstep Live CD」。これはUbuntuをベースにGNUstepのフレームワークを載せたもので、ウィンドウマネージャに「Window Maker」を採用するなど、NEXTSTEP風の雰囲気を加えている。

GNUstep Live CDのデスクトップ。ウィンドウマネージャに「Window Maker」を採用し、NeXT風ルック&フィールを目指している

 もうひとつは「Etoile」だ。こちらもUbuntuをベースにGNUstepの実行環境を加えたディストリビューションだが、オリジナルのGUIを用意するなど、NEXTSTEPの模倣に終わらない方向で開発が進められている。

「Etoile」のデスクトップ。NeXTでもない、OS Xでもない、独自のUIを目指している

 どちらもLive CDとして利用できるうえ、VirtualBoxなどの仮想化ソフトでも実行できるため、GNUstepの最新(に近い)開発状況をとりあえず知るにはこと足りる。

 ここから冒頭で挙げた「SNAP」向けの環境構築を行なうことは、また別の話となるはずなので、具体的な情報が入り次第報告したい。


筆者紹介──海上忍

 ITジャーナリスト・コラムニスト。アップル製品のほか、UNIX系OSやオープンソースソフトウェアを得意分野とする。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザーにして大のデジタルガジェット好き。近著には「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(技術評論社刊、Amazon.co.jpで見る)など。


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