タネも仕掛けも見せてしまう、ライブ時代のマジックへ
―― インターネットに話を戻します。テレビの場合、カメラワークや照明、エフェクトなどを使って、より「絵」(見た目)にこだわるような要素があったと思います。インターネット時代もやはりそうなんですか?
マリック いえ、マジシャンが背景や照明のことを考えるようではダメです。そこは絶対におしゃべりで引きつける。お客に対してやってることはずっとアナログで、そこを映像でどうにかすることはできません。そんなことをしたら自分たちの首を絞めるだけなんです。そもそも、それが特撮映画の歴史なんです。
―― 特撮というと、今で言う「ジュラシック・パーク」や「アバター」のような。
マリック かつて、フランスにロベール・ウーダンというマジシャンがいました。彼は、写真屋さん(映像制作会社)の下にサロンを持っていたんです。そして後年、そのサロンを買ったのがジャン・メリエスというマジシャン。
そのメリエスが、たまたま「同ポジ」というテクニックを思いついたんですよ。いわゆる映像トリックですね。それを使って、映画館で「マジック映画」を流すようになったんです。
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ジョルジュ・メリエスの月世界旅行 他三編 |
―― 昔の映画で「瞬間移動」をするシーンとかですね。
マリック その彼が撮ったのが「月世界旅行」(1902)です。でも、マジック映画はマジックというよりマジック・プレイですよね。それはいつしか「誰でもできるじゃないか!」ということになり、それなら美男美女がやった方がいいということになって、どうせならストーリーがあった方がいいということで、短編映画というジャンルができた。マジシャンたちの仕事が奪われたんですね。
―― なるほど、メディアが映画というジャンルを作るきっかけがマジックだったと。では、インターネット時代、マリックさんがこれからやっていくのはどんなマジックなんでしょう。
マリック あえて(デジタルの)逆を行くようですが、「生で見せる」のがものすごく面白いんですよ。Tシャツ1枚でマジックを見せ合える時代ですからね。動画はうまい人もヘタな人もいてピンキリだし、インターネットだとすぐにタネがバラされてしまいます。「ネットで見なきゃよかった」と思うほど、ライブを先に見たかったという思いが強くなっている。
―― その感覚は、すべてのエンターテインメント業界に共通しているような気がします。そんな状況の中、注目しているマジシャンはいますか。
マリック デレン・ブラウン(Derren Brown)さんというイギリスのマジシャンがいるんですが、彼は心理学を取り入れたマジックをやっているんですね。町に大きなおもちゃ屋さんがあり、そこに来た1人の女性に「店に入って、フロアーすべてを見て、いちばん印象に残ったものを書いてくれ」と言うわけです。それを「キリンだ」と当てちゃうと。
―― すごい! それ、心理学なんですか?
マリック 壁などのディスプレイに、キリンがさりげなく描いてある。刷り込みですね。すごいことに、そのタネ明かしまでしちゃうんですよ。彼自身、マジックはものすごくヘタな人だったんですけど、今では彼がもっとも有名な「マジシャン」になりつつある。
―― なるほど。これまでとは違うジャンルができているということですね。
マリック 表も裏も見せても納得する。何も隠さない。自分でタネをバラし、そこで完結して、次に行く。そういう新しいタイプのマジシャンが現れてきているんだと思いますね。これまでとは違う、面白い時代になってきていると思いますよ。
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