Windows 7本体にもメスを入れる
レノボが提案した改善点は、Windows 7本体にまで及んでいる。レノボの調査によれば、Windows 7ではOS起動時にフォントキャッシュファイルの読み込みが発生し、HDDへのアクセスが頻繁に起きていた。それがOSの起動完了までに時間がかかる要因のひとつになっていた。
フォントキャッシュファイルは通常、一度作成すれば何度も読み込む必要はない。そこでレノボでは、マイクロソフトと協力してOSレベルでの改良を加えた。この改良により、OSの起動時間が約11秒短縮したという。
「Lenovo EEでは、非常に地味な改良やチューニングにより、OSの起動や終了時の時間を短縮しています。ただ、レノボだけですべてが実現できるわけではありません。地道にパソコンを分析し、問題となっているドライバーやシステムを見つけては、そのドライバーを開発しているメーカーに改良をお願いしています。しかしメーカー側も開発の優先順位は様々です。こちらの分析結果を提示して、改良することでメーカーにもメリットがあることを説明して、改良を実現しているのです」(柴谷氏)
パッケージ版Windows 7と
レノボ製品のWindows 7の差を実現するもの
Lenovo EEによるWindows 7のOSカーネルの改良やドライバーの改良などは、どのように提供されているのだろうか? もしほかのパソコンベンダーでも簡単に入手・導入できるのなら、レノボの優位性は失われてしまうのではないかと思われる。その疑問に柴谷氏はこう答える。
「Windows 7の場合は、Windows UpdateやHotFix(個別の修正プログラム)で提供されています。レノボだけのために、マイクロソフトから何か特殊なソフトウェアが提供されているわけではありません」
「ただ、個別のHotFixなどは、それを知っているメーカーでないとプリインストールのOSには適用していないと思います。どのHotFixを適用すれば、OSの起動時間が短縮するのかなどの情報を詳しく知っているのは、マイクロソフトに改良を提案したレノボだけではないでしょうか。ドライバーの改良なども同様で、改良をお願いしたレノボだからこそ、どのバージョンのドライバーが改良されているのかを知っているのです」
レノボのパソコンにプリインストールされているWindows 7は、OSの起動時間が短縮されている。だが、パッケージで販売されているWindows 7を同じレノボのパソコンにインストールしただけでは、起動時間短縮は実現できない。
将来的には、改良されたHotFixがService PackやWindows Updateで提供されるようになると(されるとは限らないが)、レノボ以外のパソコンでも、ある程度起動時間の短縮が実現できるだろう。ドライバーに関しても同様で、必ずしもお勧めできるわけではないが、最新のドライバーを導入すれば、ある程度の高速化がはたせるかもしれない。
「レノボでは、現在もWindows 7のチューンナップを行なっています。非常に地道な努力ですが、こうした活動が他社のパソコンとの大きな差になってくるのだと思っています」と柴谷氏は語る。CPUやストレージといったコンポーネントが各社横並びになり、独自に性能を改善するのは難しい現在のパソコンだが、こうしたパフォーマンス改善のための地道な努力は、ThinkPadのDNAを受け継いだ同社ならではと評価したい。
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