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あなたの知らないWindows 第42回

複数のWindowsを使い分ける仮想化ソフト XenClient

2010年12月27日 19時06分更新

文● 山本雅史

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 ASCII.jpではWindows 7の標準仮想化ソフトとも呼べる「Virtual PC」を始めとして、いくつかの仮想化ソフト(仮想OSソフト、仮想マシンソフトとも呼ぶ)を紹介している。そうした仮想化ソフトのひとつが、シトリックスが2010年に発表したクライアント向け仮想化ソフト「XenClient」である。

 XenClientを使えば、Windows 7やWindows XPといった複数のOSを、1台のパソコン上で使えるようになる。今回から数回に渡り、豊富な機能を備えたXenClientについて解説していこう。

無料で使えるXenClient
ただし動作環境はかなり限定

 XenClientとは、オープンソースのハイパーバイザー「Xen」をベースに、PCクライアント向けに改良した「Xen Client Initiative」(XCI)を基盤とした仮想化ソフトである。

 XenClientの重要な特徴は、無料で使用できることにある。XenClientはシトリックスの仮想デスクトップ環境「XenDesktop」(サーバー用のXenDesktop、XenAppなどが含まれる)の、一部の機能として提供されている。XenDesktopは有償の製品だが、XenClient単体なら無料で使える。

XenClientのダウンロード入り口

XenClientのダウンロードは米国サイトになるため英語になるが、入り口は日本語サイトに作られているため、英語が苦手な人にもわかりやすい

 パソコンで動くように作られたXenClientだが、現在リリースされているものは、残念ながら指定されたパソコンだけでしか動作しない。その対象とは、基本的にインテルのビジネスパソコン向けプラットフォーム技術「vProテクノロジー」に対応したパソコンである。

XenClientが動作するハードウェアのリスト

XenClientが動作するハードウェアのリスト。デルやHP、レノボなどのノート・デスクトップパソコンが掲載されている。ただし、動作確認されているパソコンの数はまだ少ない

 ただし、すべてのvPro対応パソコンでXenClientが動作するわけではない。実際、筆者が持っているvPro対応マザーボード「Intel DQ57TM」では、XenClientは動作しなかった。そのため、XenClientを「確実に」動作させるには、シトリックスサイトに掲載されているハードウェアを用意するしかない。

 もちろん将来的には、シトリックスもXenClientをサポートするハードウェアを増やしていく予定という。また、次バージョンのXenClientでは、機種を限定した形で、独立GPUを搭載したノートパソコンをサポートするようだ。いずれにしても、「無料ならば」と気軽に導入しようとしてもできない、というのが実情だ。

ハイパーバイザーの利点を生かすXenClient

 先にも述べたように、XenClientはXenをベースに開発されたハイパーバイザー型の仮想化ソフトである。パソコン上でハイパーバイザーを動作させ、各OSはすべてハイパーバイザー上の仮想環境で動作することになる。

 Windows 7 Ultimate/Professionalに搭載されている簡易仮想化機能「XP Mode」は、Windows 7上でVirtual PCというホスト型の仮想化ソフトを動作させ、さらにその上でWindows XPを動作させる。つまり、仮想化ソフトはWindows 7上のアプリケーションにすぎない。屋上屋を架すことになるため、XP Modeではあまり性能が出ない。

 しかし、XenClientのようなハイパーバイザー型仮想化ソフトでは、OSを介さずに仮想化ソフトを直接ハードウェアの上で動作させる。そのためシンプルだし、最終的に動くアプリケーションの実行性能も、XP Modeに比べると比較にならないほど高い。

 これだけ聞くといいことずくめのように思えるハイパーバイザーだが、大きな欠点もある。ハードウェア上で直接ハイパーバイザーを動かすため、サポートできるハードウェアの種類がWindows OSに比べると格段に少ないことだ。前述した動作環境の限定も、そうした理由によるものだ。

 また、ハイパーバイザー型仮想化ソフトで問題になるのは、CPUやメモリーなど、パソコンとしての主要部分の仮想化はうまくできていても、USBデバイスやグラフィックスの仮想化が進んでいないことだ。例えばサーバーの仮想化では、グラフィックスはWindowsアクセラレーション機能もない、いわゆる「標準VGAグラフィック」を利用しているため、高価なGPUを搭載したグラフィックスカードを利用しても、まったく意味がない。

 USBデバイスも部分的にはサポートされているが、利用できる種類は限定されている。また、特定の仮想OSにUSBデバイスを接続すると、他の仮想OSからそのデバイスにアクセスできない。このように、クライアントパソコンにおける仮想化は、まだまだ非常に難しい問題が多い。

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