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シンポジウム『電子書籍の“衝撃”「コレがアレを殺す?」』開催

角川歴彦×立花隆、3時間語った電子書籍の未来

2010年08月16日 12時00分更新

文● まつもとあつし

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 7月24日、東京大学にて、電子書籍をテーマにしたシンポジウム『電子書籍の“衝撃”「コレがアレを殺す?」』が行なわれた。

 登壇者は、角川歴彦氏(角川グループホールディングス取締役会長、東京大学大学院情報学環特任教授)と立花隆氏(ジャーナリスト、作家、東京大学大学院情報学環特任教授)、そして石田英敬氏(東京大学大学院情報学環長・学際情報学府長)の3名。

 シンポジウムの題目にある「コレがアレを殺す」は、ヴィクトル・ユーゴーの『ノートルダム・ド・パリ』に登場するセリフ。当時、世に出回り始めた印刷本がやがて寺院を滅ぼすだろうという意味のとても象徴的な言葉だ。

 iPadのようなデバイスの魅力や、既存の業界へのインパクトで語られることが多い電子書籍だが、長くメディア周辺の課題を追ってきた立花氏と、メガパブリッシャーの立場からインターネットや著作権について積極的に発言を行なってきた角川氏はこの状況をどう見ているのだろうか。お二方の講演の様子をお届けしたい。


立花隆氏「総務省、国会図書館の動きを注視」

現在、東京大学付属病院に入院中の立花隆氏は、今回「病院を抜け出して」シンポジウムに参加。3時間近く会場で議論を交わした

 取材を通じた様々な分野への造詣が深い立花隆氏だが、電子書籍も例外ではない。2004年の電子書籍ブームの際には、デバイス開発にあたってパナソニック(Σブック)とソニー(リブリエ)の両社から相談を受けていたという。

 立花氏は現在、自著を電子ブック化する取り組みをまず韓国語版から進めている。日本語版でない理由は、電子化の話を持ちかけた際に国内出版社は軒並み積極的に受け止めなかったからだと明かす。現状、大半は様子見であったり、環境が整うのを待っている、というのだ。

 一方の韓国では、すでに政府(文化体育観光部)から5項目にわたる「電子出版産業育成方針」が示されており、実際、電子化にあたっての出版社側の反応も素早かったという。

 立花氏は、韓国において電子書籍に関する取り組みが積極的な理由のひとつとして、書籍の横書き対応が進んでおり、電子化への障壁が低いことを挙げた。

韓国における電子出版産業育成方針の図版。総務省「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」報告より抜粋

 一方、日本での状況はどうなっているのか? ここで立花氏は日本政府の「原口ビジョン」を紹介した。2020年時点で5000億円規模のデジタル出版市場を生み出すことを目標としているが、すでに韓国ではほぼ解決されているフォーマットなどの技術的課題の解決と、国立国会図書館を中心とした総デジタル化の推進に課題があるとする。

 さらに、「実は日本の電子書籍市場は、すでに500億円を突破、アメリカを越えている」と指摘。ただし、その内容はいわゆるガラパゴス携帯でのBL、TL(ボーイズラブ、ティーンズラブ)ものが中心であり、「本格的な大人の出版世界に火がついたとは言い難い」とする。

 また、取次ぎの持つ金融機能(書籍が実際に売れる前に出版社にその代金が取次ぎから支払われる)にも触れながら、売れない本でも作り続け、流し続けてきた出版は「水物」であり、東京堂書店の佐野店長の「(電子書籍により)長期的にはこれまでの出版流通機構が抜本的に変わらざるを得ない」という言葉を紹介した。

 しかし、イーブックイニシアティブジャパンの鈴木裕介氏の言葉を引用しながら、電子書籍の登場によって、出版業界にも以下のような変化が訪れつつあるとも語った。

・ベストセラーよりも10年売れる本を

・ロングテール現象(流通経費・在庫費用・処分費用ゼロ)

・売上げの半分以上がテール部分

・過去の出版物がすべて商売になる

 この変化には期待を寄せる立花氏だが、各国で進む書物の大規模デジタルデータ化には警戒感を示す立場だ。国立国会図書館館長の提唱するいわゆる「長尾モデル」が「バス代程度での書物の貸し出し」を提唱している点にも触れ、「国がやるなら、超流通(スーパーディストリビューション)的著作権管理機構」が必要と主張した。

 最後に立花氏は、「出版界はいつも精神の自由の砦でなければならない」としてグーグルと中国政府との駆け引きを例に挙げながら、日本の総務省、国会図書館が果たしてどこに向かおうとしているのか注視していきたいとして講演を締めくくった。

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