先日紹介した富士通総研の「クラウドコンピューティングに関するユーザーニーズの調査」によると、クラウド導入の最大の障壁は「セキュリティ」であることが見て取れる。この課題を解決するために、マカフィーに入った人物がいる。
クラウドに踏み出せないCIOの気持ちとは?
7月1日付けで、マカフィーの取締役常務執行役員エンタープライズ営業統括として就任したのが、茂木 正之氏である。普通であれば見逃してしまうような人事情報だが、マカフィーにとってみると、クラウド、仮想化、Web2.0といったIT環境でのセキュリティ事業を見据えた大きな人事だという。
茂木氏の経歴で一番注目したいのが、1995年から15年に渡って要職を歴任してきた日本オラクルである。同氏は、PCメーカーとのパートナービジネスを9年に渡って推進。2001年に子会社のミラクル・リナックスの社長も務め、Linux事業を立ち上げる。その後、東京以外の支社を担当したり、製造系・運輸関係のアカウント担当となったりしたという。
こうした経歴から、同氏はいわゆるCIOの立場にある人たちと交流を深めることになる。そして、茂木氏は「やはりここ2~3年、クラウドコンピューティングは大きな話題になっており、無視できない存在となっています。しかし、セキュリティとネットワークの保証なしに使えないという声は何社からも聞いた」と語る。確かに、コスト削減効果の大きいパブリッククラウドへのシステム移行は魅力的だが、ビジネスで重要なデータを外部に預け、雲の中で運用するという点には不安がつきまとう。仮にシステム面でいくら保険をかけてあっても、心理的な障壁は非常に高いといえる。
茂木氏は、こうしたクラウド導入への障壁を取り払うためにマカフィーに入社したと語る。「マカフィー製品のePOなどを使うと、本当にセキュリティの現状を可視化し、コントロールすることができます。『セキュリティの専業ブランド』として売っているわけですし、クラウド時代のストラテジックパートナーとして認識してもらうのが、私の仕事」(茂木氏)。
まだ就任から日が浅いが、茂木氏は早急に体制作りの強化を進めていくという。「営業、マーケティング、コンサルティングなど総合力を駆使し、グローバルに認められたマカフィーのブランドイメージを植え付けていきます」(茂木氏)。たとえば、グローバルではデータセンターの安全基準評価などもやっており、多くのユーザーが懸念としているクラウドのセキュリティをきちんと担保している形だ。まだまだ強いとは言い切れない同社のエンタープライズ事業とブランドを今後どのように強くしていくか? クラウドのセキュリティという分野で各社がスタート地点に立っているいまだからこそ、今後の手腕が問われることになろう。