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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第1回

ネット帝国主義、その先にあるもの。

2010年04月04日 12時00分更新

文● まつもとあつし

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FREEを越えてデジタルメディア維新へ

 岸氏の近著『ネット帝国主義と日本の敗北』も、その問題意識のスタートラインとしては共感できる部分も多い。少なくとも現状では、リアルを浸食し続けるネット市場において、プラットフォームを主導する日本企業は皆無といって良い状況だ。

 岸氏が言う「FREE礼賛」というよりも、手放しに「IT礼賛」を叫ぶのは(つまり、Kindleは凄いとか、iPhoneは素晴らしいという評価だけでは)、あまりにも脳天気だという点では同感せざるを得ない。

 しかし一方で、「文化とジャーナリズムを守ろう」という「社会的な使命感」からコンテンツを有料化していこうというのは楽観的だと感じる。

日本経済新聞電子版トップページ:月額4500円という価格設定が議論を呼んでいる

 その理由は、消費者が求める限り、デジタルコンテンツが無料あるいは、流通コストの低下に伴う低価格化に向かうのが(少なくともこれまでのネットの世界では)事実であること。

 その中で収益を目指すなら、必然的に回収は別のところで図るべきではないのか、というのがひとつ。

 もうひとつは、これだけ嗜好が細分化され、しかもネットというパーソナルなメディアがファーストウィンドウとなる中で、既存のマスコンテンツの制作体制を、そのウィンドウの有料化で維持しようとするとするのは、どうにもバランスが悪い。

 プラットフォームの主導権争いには敗れようとしている。これは厳然たる事実だ。電子書籍の世界にも黒船が到来しつつある。岸氏のいう帝国主義とは文化の浸食という側面も持つ。そんな中どのように戦えば良いのか。そのための戦略が求められている。

 この連載では以下のような内容を予定している。

まつもとあつしの「メディア維新を行く」連載予定

  • マスコミ・出版業界を解体する「iPadとEPUBとiBooks」
  • ジャーナリズムは不滅なのか?
  • 審査という必要悪「iPhoneアプリとAndroidの相違点」
  • アプリレビューと売上げとの関係を考える
  • アプリという中抜きモデル「アプリ型書籍」
  • テレビドラマはどこに活路を見いだすのか?
  • ソーシャル化するアニメーション~「けいおん!ヒットとCGM」
  • ライブエンタテイメントへの期待~「空の境界」
  • 著作権を考える「青空文庫とKindle/iBooks」
  • 広告モデルか課金モデルか?
  • ロングテール神話の崩壊とその先にあるもの
  • リアルタイム志向は消費スタイルも変える

※順不同・内容は現時点の想定

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