2月9日、日本アイ・ビー・エムは同社のプロセッサの最新版「POWER7」を搭載したサーバー「Power Systems」の新製品を発表した。2時間におよぶ発表会では、システム製品事業部の戦略や製品概要のほか、POWER7やPower Systemsの基盤技術についても解説された。
Smarter Planetを実現する
スマートなシステムの要
発表会の冒頭、日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員 システム製品事業担当 藪下真平氏は、ハードウェアを中心とするシステム製品事業部の戦略について説明した。
ご存じのとおり、同社はありとあらゆる物を相互接続し、金融や通信、都市計画、小売、流通などのさまざまな分野でインテリジェントなシステムを実現する「Smarter Planet」という概念を提唱している。今回発表するPOWER7搭載サーバーは、こうしたSmarter Planetを実現するスマートなシステムの重要なコンポーネントとなる。具体的には膨大なデータから必要な情報をリアルタイムに抽出し、ユーザーがより確信を持って意思決定を支援するためのマシンとして最適だという。
とはいえ、単にハードウェアだけの提供ではなく、「これまで以上にハードウェア、ソフトウェア、サービスを連携させて提供する必要がある」(藪下氏)として、ソリューションとしての提供を強力に進めていく。
続いて、日本アイ・ビー・エム株式会社 理事 パワーシステム事業本部 高橋信氏が、新発表されたPOWER7搭載サーバーを披露するとともに製品概要について説明した。
プロセッサであるPOWERシリーズは高速なクロック周波数を追求しつつ、2000年代の当初からマルチコア化を推進。POWER7は、45ナノメートルのプロセスルールに移行し、最大動作周波数は4.1GHzへ。そして、いよいよプロセッサあたり8コアの搭載が可能になった。「スレッドも2つ(POWER6)から4つに拡張された。最大8コアで32スレッドの実行が可能で、コアあたり2~4割のパフォーマンスアップになる」(高橋氏)と、従来のPOWER6に比べ、より省エネ・省スペース、高パフォーマンスを実現する。また、内蔵型のDRAM(eDRAM)をL3キャッシュとしてチップに搭載することで、従来に比べコアからL3キャッシュへのアクセスが約6倍高速化。この結果、商業計算ではPOWER6の4倍、HPCのエリアでは5倍の向上が実現するという。
Power Systemsの価値は
「ワークロードの最適化」
今回発表されたPOWER7搭載サーバーは、4ソケットモデルの「Power 750 Express」、32コア搭載可能なHPC向けの「Power 755」、最大64コア搭載可能なモジュラ型モデルの「Power 770」、ハイエンドモデルの「Power 780」の4機種。このほか、従来の64コア搭載サーバー「Power 595」と同等のフットプリント、スペース、電力で、最大256コアをサポートするハイエンドサーバーの開発意向も表明した。
高橋氏は、4ソケットのPower 750を中心にヒューレット・パッカードやサンのサーバーと比較し、「4ソケットでは業界最速で、128コア32ソケットの競合サーバーと比べても僅差になっている。92台のSUN SPARC Enterprise T2000を1台のPower 750に統合できる」と高い性能とキャパシティをアピール。コア数、スペース、電力、ソフトウェアライセンスの削減に関して、大きく寄与できることも例示された。
こうした強力な処理能力を持つPower搭載のサーバーで実現される価値は、「ワークロードの最適化」だという。ワークロード最適化とは、いろいろなアプリケーションの要求に合わせて柔軟にリソースを調整する機能。具体的には、無限大の仮想化、ダイナミックなエネルギー最適化、ゼロクラスのダウンタイム、管理の自動化などをもたらすという。
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