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IBM Systems Live 2010完全レポート

スマートなITインフラを支える技術を完全網羅

2010年05月10日 09時00分更新

文● 渡邉利和

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4月28日、東京都内のホテルを会場に、「IBM Systems Live 2010」が開催された。キーワードとして掲げられたのは、「インフラは、もっとスマートになる Systems for the Next Decade」だった。ここでは、“スマートなインフラを実現する”ためにIBMが用意したハードウェアを中心とした技術要素を紹介しよう。

改めて「スマート」とは?

インフラは、もっとスマートになるを謳ったIBM Systems Liveの会場

 「スマート」という言葉は、一昔前の日本では「(体型が)痩せている」という意味に理解されることが一般的だったが、現在のIT関連の文脈では「手際がよい/賢い」という意味で使われることが一般的になってきている。今回のIBMのイベントのキーワードとして掲げられている「Smart/Smarter」は、もちろん体型の事ではないわけだが、さらに「無駄なことは一際せず、最高の効率で最大限の結果を得る」というニュアンスが強いようだ。数年前から「Green IT」への関心が強まっており、「グリーン化」を実現できるのが「スマートなIT」だ、という認識が一般化してきたことが背景にある。

 IBMは、2009年からコーポレートビジョンとして「Smarter Planet」を提唱している。その意味は「環境、エネルギー、食の安全など、地球規模の課題をITの活用により解決し、地球をより賢く、よりスマートにしていく」ということだ。ただし大目標としてはまったく異論もなさそうな話ではあるものの、IT企業としては「どうやって?」という問いに答えなくてはならないはずだ。今回のIBM Systems Live 2010は、その回答の一端をわかりやすく紹介するイベントだと位置づけることができるだろう。

日本アイ・ビー・エム 代表取締役社長 橋本 孝之氏

 冒頭に挨拶を行なった日本IBMの代表取締役社長の橋本 孝之氏は、まずは国内の景気動向について「昨年半ばから少しずつ経済が回復してきており、2010年度は『成長戦略』が企業各社の目玉となるだろう。ただし、リーマンショック以前とまったく同じ姿には戻らない。新しい価値観に基づく新しい世界になる」との見通しを語った。その上で、IBMが取り組む「Smart」に関する課題として「無駄や解くべき問題はまだまだある」と指摘した。

 たとえば、データセンターにおけるエネルギー効率の問題や、データ量がさらに増えていくことに対する対応、ワークロードに応じた最適化による高効率追求などだ。そして、その具体的な内容が以降のセッションで解説された。

直面する課題を解決するITインフラ

米IBM システムアンドテクノロジーグループ シニアバイスプレジデントのロドニー・C・アドキンス氏

 基調講演として、米IBM システムアンドテクノロジーグループ シニアバイスプレジデントのロドニー・C・アドキンス氏が“Systems for a Smarter Planet”と題する講演を行なった。

 同氏はまず「Smart」とは「システムや業務プロセスにインテリジェンス(知性)を与えること」だと説明した。次いで、現時点を「新しいスマートな10年の始まり」と位置づけた上で、検討すべき3つのテーマとして「データがゲームのルールを変える」「拡張性と複雑性がもたらす新たな課題」「スマートな地球のためのスマートなシステム」を提示した。

 データがゲームのルールを変える、とは、端的にいえば「処理すべきデータ量はまだまだ増加し続ける」という認識を踏まえ、それにどう対応していくかを考えよう、ということだ。同氏は、背景となるデータとして「地球上に存在するトランジスタの数は、全人口の1人当たり10億個に」という数字を紹介し、「トランジスタの経済性」と「インターネット」との組み合わせで「モノのインターネット(Internet of Things)」が実現したと改めて指摘した。さまざまなデバイスやセンサーがインターネットに接続され、データを発信することもあって、現在のデータ量は年間60%の増加率に達しているという。これを別の表現で「1秒間に6兆バイトのペースで増殖する」のだという。

 さらに、量的な変化だけに留まらず、質的な変化も起こっていると同氏は語った。インターネットを通じたトランザクションが増加するだけでなく、セキュリティ強化などの要件によってリアルタイムの分析処理なども増える。同氏はこうした傾向を大きな視点から「ワークロードの変化」だと整理した。膨大なデータをリアルタイムに近い形で分析して新たな知見を得るなど、従来あまり実現されていなかった処理に対する要求が高まっており、米国でもいろいろな事例が生まれてきているという。

 続いて、拡張性と複雑性がもたらす新たな課題というテーマでは、新たな「デリバリーモデル」について語られた。デリバリーモデルとは、要は「ITを必要としているユーザーにどのような形で提供するか」ということであり、現在注目を集めているクラウドコンピューティングも新しいデリバリーモデルの1つと位置づけられる。爆発的に増大するデータに対してより高度な処理を行なうITインフラは、必要に応じて柔軟に拡張できる必要がある。拡張のたびに多額の投資を行なうのは現実的ではないので、ユーザーの負担が軽減できるような提供方法を工夫する必要があるというわけだ。

 こうして同氏は、データ量増大と処理の高度化を踏まえた「ワークロードの最適化」、エネルギー効率や運用管理負担を意識し、拡張性と効率性を追求する「データセンターの管理」、ITインフラをユーザーにとって使いやすい形で提供するための「適切なデリバリー・モデルの決定」の3要素に関して「IBM Smarter Systemsのブルー・プリント」を提示した。これが、俯瞰的な視点でのIBMの現時点での重点的な注力分野だといってよいだろう。

IBM Smarter Systemsのブルー・プリント

(次ページ、メインフレームと仮想化の関係)


 

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