1月14日、日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)は2010年のクラウドコンピューティングの取り組みを説明する記者発表会を開催。新設された「クラウドコンピューティング事業」組織のほか、新製品やサービス、マーケティング施策、人材配置や教育面まで幅広い内容が紹介された。
社長直轄組織“Team Cloud”300人が
春から一斉に行動開始
2010年の日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)は、クラウドに一大攻勢をかける。今まで個別にクラウド対応してきた体制から、社長直属のクラウド統括組織「クラウドコンピューティング事業」を設立し、クラウド最高技術責任者(CTO)を任命。実働部隊を“Team Cloud”と命名して300名のスタッフを選抜する。さらに技術理事29名によるコミュニティも組織し、知識共有も図る。社長直属のクラウド統括組織設立は、日本IBMがワールドワイドに先駆けて作った。
同部門はまた、ワールドワイドのIBMクラウド・ラボ10個所、クラウドデータセンター9個所、基礎研究所8個所、開発研究所40個所以上、そしてIBM本社のクラウド部門と連携を取り、クラウド事業を推進していく。
クラウドコンピューティング事業で、特に重要なのがTeam Cloudだ。彼ら300人は、1月中に選抜を終え、4月までの教育期間を経て実働する。300人の内訳は、大和研究所からソリューション提案、マーケティングまでと幅広い。
同事業執行役員の吉崎敏文氏は、「Team Cloudはクラウドの精鋭チーム。スペシャリストだ。昨年からクラウド教育を社内で行なってきたがさらに教育レベルを上げて最強集団を作る。クラウドは市場の動きが速くオープンな戦いだ。クラウドへのケーパビリティをいかに上げていくかにかかっている」と意気込みを語った。
Amazon EC2的サービスも開始される?
さらにパブリッククラウドにも攻め入る
日本IBMのクラウド攻勢は組織設立にとどまらず、製品/サービスの大量投入という形にも表われている。吉崎氏は「今年はどんどん(製品/サービスを)出していく。プライベートクラウドなど、今年は断続的に発表することを宣言したい」と語り、「IBMの企業向けクラウド製品/サービス体系」というスライドを映し出した。
注目株は、スライド中央の「パブリック デスクトップ クラウド」だ。詳細は述べられなかったが、「複数のシンクライアントを仮想化してクラウド化するパブリックのソリューション」(吉崎氏)とのこと。
ところが、記者会見終了間近の質疑応答で、吉崎氏からはさらに気になる発言が飛び出した。吉崎氏が「(IBMの)グローバルのインフラを使って、大規模なパブリック向けのインフラを発表できる」という言葉を受けた記者の質問「Amazon EC2のようなサービスの予定はあるのか?」に対し、「まったく同じではないが、今後発表されるものの中に、非常にそれに近いものがある。大規模で、グローバルインフラを使って、パブリックで、お客様にリソースを柔軟に提供できるもの」と、吉崎氏は回答した。
マイクロソフト、グーグル、アマゾンが提供するクラウド基盤が注目されて久しいが、詳細は分からないものの、ここに来ての吉崎氏の発言は注目に値する。
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