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言い訳しない──夏野剛が語る「勝てる組織の心がけ」

2009年12月29日 12時00分更新

文● 広田稔/ASCII.jp編集部 協力●シアター・テレビジョン

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ユーザーにとってのベストをとことん追求する

── 夏野流の「いいサービス作りのコツ」はありますか?

夏野氏:対価を払う立場の人にとってベストなことをとことん追求するということです。おかしいと思うことは放っておかないで、すべて直していく。「このサービスはここを直せばよくなるんだけど、事情があってできなくてね」というのは、よくある話です。その言い訳をいかにゼロにできるか。これに尽きます。

 「マイクロソフトのOSが……」とか、「このハードは自分たちで作っていないから……」とか、いろいろな言い訳ができるんです。でも、そんなことはお客さんにとってはまったく関係ない。だったら直せばいいじゃない。それを徹底的にやるということです。


── 夏野さんは経営者という上の立場にいながら、現場のような「ユーザー目線」を持っていると感じます。その理由はなんですか?

夏野氏:上の立場の人がユーザー目線を失って生きて来れた時代は、20年前に終わっているんです。終わっているにもかかわらず、なぜユーザー目線を持っていない人が経営陣にいるのか。経営陣を決める側にも、自分の上に立つ人、後継者になる人が、自分より優秀だったら嫌だなぁという気持ちがあるんじゃないですかね?

 日本の組織では「30年間同じ会社に勤めていました」という人がゴロゴロしています。これって一般的に言うと、すごく偏った人じゃないですか。そうした人がトップに就いているのが日本。

 日本以外の企業はこんなことはほとんどあり得ません。経営陣の多くは、さまざまな会社でいろいろなキャリアを積んできた人で、たまに同じ会社に勤め続けた人がいるくらいです。

 一方で日本の場合、経営陣は同じ釜の飯を食ってきたメンバーというケースが圧倒的に多い。世の中には多種多様な人があふれているのに、同じような経歴を持った同じ年代の人が集まって話し合って方針を決めていたら、世の中からズレる可能性が高くなりますよね? だからユーザー目線を保つことが難しくなってしまう。

 これは日本企業の最大の試練です。若い経営者やユーザー目線を持っている経営陣がいることについて「ヘー、珍しいですね」と言われることが危機だと思う。普通は全員、ユーザー目線を持っていないとおかしい。


── 最後に、ニコ動の黒字化はいつぐらいに達成できそうですか?

夏野氏:来年には黒字化します。2008年と2009年を比べると、広告の収入は倍以上になっている。金融危機の影響があったので鈍っていますが、僕はもっと伸びていいと思う。加えて、今年は生放送という新しい企画が大当たりしたため、月額課金のプレミアム会員への加入者が増えました。

 ニコニコ動画の事業構造を言うと、ひとつにプレミアム会員を獲得するために生放送を充実させて、そこで収支を均衡させるというアプローチがあります。一方で一般ユーザーのサポートは、広告収入の範囲でできる限りやっていく。収入と支出を思想として分けて考えることで、来年の黒字が見えてきました。ぜひ期待してください。


この正月、「スカパー!」でニコニコの裏側を見よう!

まじめに密着! ニコニコ動画

「まじめに密着! ニコニコ動画」の紹介ページ

 お正月の三が日、シアター・テレビジョン(スカパー! ch.262)ではニコ動のキーパーソンをインタビューした「まじめに密着! ニコニコ動画」という番組を放送する(関連リンク)。1月1日はニワンゴ社長・杉本誠司氏、2日は今回取材した夏野氏、3日は研究開発本部長の千野裕司氏のインタビュー。さらに13時間生放送時のひろゆき氏に密着取材した濃い内容となっている。

 1~3月には、現在、全国8都市をツアーしている最中の「ニコニコ大会議」を追っかけレポートした番組を放送する。ニコ動ファンなら録画して永久保存すべし!!


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