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IP放送を支える基盤技術をいち早くご披露

映像の「生」配信に魂を込めるNTT研究所で見たデモ

2009年12月28日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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画面で見る2つの実験

 さて、実際に画面を元に実験について見ていこうと思う。ネットワークは5つのIPルーター、4つの光スイッチで構成されており、スイッチ間をつなぐ光回線を設定することで、パスが張られ、IPネットワークとして利用できるようになる。1Gbps回線を使っていたため、1.5Gbpsの送信のためには2回線を設定する必要があったという。

武蔵野ルータ×2台、小金井、大手町、堂島(大阪)の5台でネットワークを構成。上がIPレイヤ、下が物理レイヤのパス

設定後は物理層で下部にある武蔵野の2台のIPルーターにパスが張られる。だいたい1回線で20~25秒くらいかかるという

 1つのパスを張るのに約20秒、そして実際の経路変更にさらに時間がかかるが、これはかなり安全側の設計をして、保護時間を長めにとっているからであるという。もちろんこれに満足しているわけではなく、大幅な時間短縮のため、制御方式を改良中とのことだそうだ。

マイクロ秒単位でトラフィックを検知する

 そして、この実験で混雑状態を検知するのが、2つめの技術として紹介されたマイクロ秒単位での測定である。これはミリ秒オーダーだとすでに間に合わないという事情がある。

PRESTA 10Gと呼ばれる汎用PCベースの測定器

NTT研究所オリジナルの専用10GbE対応NICが搭載されている

2つのルートで異なる遅延ピークが検出されている

トポロジの再構築後はルートが1つになったため、遅延ピークも1つになった

エミュレータでジッタを挿入したが、SNMPでの3秒の解像度ではジッタを検出できない

100マイクロ秒の解像度を用いるPRESTA 10Gでジッタを検出でき、トラフィックの変化を検知できる

 こうした実験の背景には、放送サービスのIP化が挙げられる。i-Vistoに関しても、「もともと放送局用の機器間インターフェイスは同軸ベースなのですが、これをIPでできないかと考えたのが最初です。その後、ストリームをIPネットワーク転送するゲートウェイを作ったら大きな反響がありました。その後、蓄積するアーカイブ装置、そして一部リアルタイムに編集する装置まで作り、放送局のサブシステムをIP化できるようにします」(メディアイノベーション研究部 並列分散メディアシステム研究グループ グループリーダ 工学博士 丸山 充氏)という生い立ちからスタートし、ゆくゆくは放送局の外の地方局や制作会社などともIPで直接素材をやりとりできる世界を提案していきたいと話している。このようなコンテンツ配信を考える場合、当然ながら配信の品質を向上させる仕組みが必要になるわけだ。

 2009年7月に行なわれた皆既日食の臨場感のあふれる中継に続いて、実際にアピールする場も検討しているとのことなので、2010年にお披露目される機会があるかもしれない。

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