このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

PCセキュリティーを守る!――ビジネスの新常識 第4回

なぜ止まらない? ファイル共有ソフトでの情報漏洩

2009年11月12日 12時00分更新

文● 黒木 直樹/トレンドマイクロ 上級セキュリティエキスパート

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

気になる「upフォルダ」の中身は?

情報漏洩用ファイルを確認

図8 「DOCUMENT AND SETTINGS」フォルダ内に情報漏洩用ファイルを確認できた

 「DOCUMENTS AND SETTINGS」というフォルダーを開くと、先ほどマイドキュメント内に用意したサンプルファイルがある(図8)。このファイルがupフォルダに保存されていたということは、PCがWinnyのネットワークにつながっている場合、Winnyユーザーなら誰でもこのファイルをダウンロードできる状態にあるということになる。

P2P技術を利用したファイル共有ネットワークのイメージ図

図9 P2P技術を利用したファイル共有ネットワークのイメージ図

 また、P2Pネットワークではダウンロード時に経由したPCすべてにデータが保存されるため、一度漏えいしたファイルを完全に回収することは不可能である(図9)。今回は無害なサンプルファイルだが、これが会社の機密や個人情報などであった場合、その被害は計り知れないものになる。なお、もうひとつの「TOOL」フォルダーにも、感染PC内の文書ファイルがコピーされていた。

「結婚式.scr」を実行して表示されたメッセージ

図10 「結婚式.scr」を実行して表示されたメッセージ

 zipファイルに保存された残りのスクリーンセーバーを見てみよう。「結婚式.scr」という名称のついたスクリーンセーバーを実行すると、先ほどと同じく「無効なポインタ操作」というメッセージが表示される(図10)。

 すでにお気付きかと思うが、この結婚式.scrというファイルはアンティニーのコピーである。アンティニーは感染PC内の情報を漏えいさせるだけではなく、自身のコピーも一緒に保存し、次にファイルを開いたPCで感染活動を行なうのだ。

 また「結婚式」という名称もアンティニーが自動的に付けたもので、ほかにもいくつかのパターンが確認されている。人気バンドの名前やアダルト関連など、いずれもユーザー心理をたくみに突いて不正プログラムを実行させようとするものばかりだ。

 ここまで述べたような、ファイル共有ネットワーク上で情報漏洩させる不正プログラムは「暴露ウイルス」とも呼ばれる。今回のものは主に文書ファイルを漏洩させるものたが、ほかにはPCの操作画面をキャプチャーして外部に公開するものも存在する。こうした不正プログラムに感染すると、ユーザーが普段PCでどんなことをしているのかが外部に筒抜けとなってしまう。

 2006年前後からファイル共有ソフト関連の情報漏洩事件が多数報道されてきたが、未だにファイル共有ソフトによる事件は後を絶たない。こうした情報漏洩への対策は、

  • セキュリティーソフトを最新の状態に保ち、定期的にスキャンを行なうということ、
  • ファイル共有ソフトを使用するPCに会社の機密情報や個人情報を保存しないということ

――が基本である。しかし、不正プログラムに感染しない一番の方法は、「そもそもファイル共有ソフトを使わない」ことだ。その目的が何であれ、ファイル共有ソフトを使用している限り、常に高い感染リスクにさらされているということは紛れもない事実なのだから。

 (次回は12月中旬に掲載予定です)


著者紹介:トレンドマイクロ株式会社 上級セキュリティエキスパート
黒木 直樹(くろき なおき)

トレンドマイクロ株式会社 上級セキュリティエキスパート。プロダクトマーケティングを経て、製品開発部の部長代行、コンサルティングSEグループ兼インテグレーショングループ部長を歴任。2008年よりアライアンスマーケティンググループディレクターとして、他社との技術連携の陣頭指揮を執る。2009年より戦略企画室部長として国内外のプロジェクトを推進する一方、セミナーでの講演などを通じて幅広いユーザー層へセキュリティ啓発活動を行なっている。


■関連サイト

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ