トレンドマイクロでは4年前から「クラウド対応」を始めていた。同社日本法人の代表取締役社長兼CEOのエバ・チェン氏は、満席になった来場者に向かって語った。
トレンドマイクロが30日に都内ホテルで開催した、プライベートイベント「Direction 2009」。クラウド、仮想化、そして企業のITマネジメントやガバナンス(企業統治)、情報漏洩対策などのコンプライアンス(法令遵守)が求められる現在、企業が実践すべきセキュリティー対策を関連企業の事例を含めて紹介するという内容になっている。
基調講演に登壇したチェン氏は、クラウド時代と従来のセキュリティー対策の違いを図などを使って分かりやすく説明した。サーバーもクライアントも仮想化されるクラウド時代には、従来のように社内外のネットワークを結ぶポイントにファイアウォールを立てておけば済む、という簡単な話ではない。
万一、仮想化したサーバー/クライアントが悪意のあるプログラムに感染した場合、そのクラウド内(つまりファイアウォールの内側)で感染サーバー/クライアントが増殖してしまうおそれがあるからだ。
特に、クラウド基盤を社内に持たず“パブリッククラウド”を利用する場合には、システムのセキュリティーだけでなくデータのセキュリティーも重要になる。具体的には、データの窃盗に備える暗号化や、クラウドにアクセスする端末がネットブックやスマートフォン、iPhoneになる可能性もあるため、クラウドに接続する端末にはおよそすべて保護の対象とする必要がある。そのため同社でも、iPhoneやスマートフォン向けのウイルスバスターを拡充している。
また、現在はWebサイトの改ざんを含め、2秒半に1つのマルウェアが発生するほど、多くの脅威が遍在している。それに対応するべく、社内にプライベートクラウドを作成し、多くのリソースで分散処理することで、新しい脅威に対して即時的プロビジョニング(リソースの準備・提供)が行なえる。そのための実装方法は当日のセミナーなどで紹介する、と講演をまとめた。
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そのほか、基調講演ではJTBの常務取締役経営企画担当・IT企画担当の志賀典人氏が登壇。同社の旅行商品販売システムを今年4月にレガシーシステムからオープンシステムに移行したものの、顧客管理用のデータベースが複数存在すること、今後はクラウドや仮想化を取り込んでそれらデータベースを共通化し、セキュリティー向上を目指していること、などの現状を説明した。