ゆる鉄センサーを駆使して、主題を見つけ出す
前置きが少々長くなってしまったが、本コーナーでは「ゆる鉄」写真展を大阪で開催中の中井氏を直撃した結果をお届けする。
中井氏に「ゆる鉄」の撮り方の秘訣について尋ねたところ、「明日の朝、阪堺電気軌道を撮影しに行くので、よかったらご一緒しませんか?」との申し出。これは実際に現場で撮影しながら話を聞かせていただける絶好の機会! というわけで急遽、中井氏の撮影に同行する形となった。
ちなみに阪堺電気軌道は、天王寺から浜寺駅前までを結ぶ路面電車で、沿線の風景には「大阪人の日々の暮らし」がぎっしり詰まっており、なかなか味わい深い路線だ。「ゆる鉄」の被写体としては格好の材料といえるのではないだろうか。
そして翌朝、阪堺電気軌道の始発駅・天王寺から乗車し、撮影はスタートした。中井氏は車窓から見える景色を見ながら「いやあ、ゆるくていいなあ」と繰り返す。「ちょっとここで降りましょうか」と天王寺から4駅目の北畠駅で下車し、ぶらぶらと町を歩き始めた。
犬の散歩をしているおじいさん、路面電車と競争している自転車少年、部活動に向かう中学生たち──そんな日常の光景が目に付くばかりで、鉄道写真にふさわしい被写体が見当たらない……。「ゆる鉄の作品を撮るときは、車両はぜんぜん見てないんですよ。ただひたすら、ゆる~い景色を探しています」と中井氏。たしかに北畠駅で下車してからずっと、中井氏は阪堺電気軌道の車両には目もくれず、この町の人々や様子ばかりを注視している。
「僕の場合、こども、年配の方、犬&猫、それとスーパーカブあたりを見つけると、ゆる鉄センサーが反応しちゃいますね」と主題探しのコツを教えてくれた。そう言われてみれば、撮影中の中井氏の動きを見ていると、これらの被写体を瞬時に見つけ出して主題に据え、車両や駅舎といった鉄道に関する副題を添えることで「ゆる鉄」作品をつくりあげているのがわかる。