必要な機能がそろったHyper-V 2.0
Windows Server 2008 R2では、ハイパーバイザ型のサーバ仮想化ソフトウェア「Hyper-V」がバージョンアップし、「Hyper-V 2.0」となる。基本的なアーキテクチャはWindows Server 2008のHyper-V(Hyper-V 1.0)と違いはない。しかし、サポートする論理プロセッサ数が16から64に、利用可能な仮想マシン(子パーティション)の数が128から384に増えるなど、スケーラビリティが向上している。
項目 | Hyper-V 1.0 | Hyper-V 2.0 |
---|---|---|
論理プロセッサ数 | 16 | 64 |
仮想マシンの数 | 128 | 384 |
仮想プロセッサ数 | 128 | 512 |
仮想マシンから利用可能なプロセッサ数 | 4(Windows Server 2008の場合) | 4(Windows 7/Windows Server 2008の場合 |
もちろん一般的なサーバ仮想化において、1台の物理サーバ上で100以上もの仮想サーバを動かすケースは少ない。しかし、Windows Server 2008 R2ではクライアントOSを仮想化上で動かすVDI(Virtual Desktop Infrastructure)に対応しており、ゆくゆくはハイエンドサーバのHyper-V上で多数の仮想クライアントを実行するデスクトップの仮想化という使い方も増えてくるかもしれない。
またHyper-V 2.0は、ストレージのホットプラグに対応し、起動中の仮想マシンを停止させることなく、仮想ディスクを追加/削除することが可能になった。Hyper-Vの仮想ディスクはIDE形式とSCSI形式とがあるが、ホットプラグに対応するのはSCSI形式だ。ただ、ブートデバイスとして使えるのはIDE形式のみとなるため、結果的にホットプラグが使えるのはシステムライブではなくデータ用ドライブとなる。
ほかにネットワーク関係では、ジャンボフレームや仮想マシンのTCP/IPスタック処理の一部を直接物理NICに任せる「TCP/IPオフロード」をサポートする。物理サーバのネットワーク機能の強化に使われている技術が、仮想化にも取り入れられた形だ。
動作したまま仮想マシンを移動できる
そしてHyper-V 2.0の新機能として忘れてはならないのが、ライブマイグレーションへの対応だ。
これまでのHyper-Vが搭載する「クイックマイグレーション」と今回のライブマイグレーションは、どちらも運用中の仮想マシンをほかの物理マシン上に移動させる技術だ。ただしクイックマイグレーションは、仮想マシンのメモリ内容を外部のストレージに書き出し、移行先の物理マシン上の仮想マシンに内容をコピーする仕組みであり、移行時に数秒から数分間のサービス停止が生じる。そのため、クライアントからのコネクションは切れてしまう。
これに対しライブマイグレーションは、仮想マシンが動作している状態でメモリ内容をほかの物理マシン上の仮想マシンにコピーする。サービスが停止するのは最後の切り替えの瞬間だけで、まさに一瞬となる。そのため、クライアントへのサービス提供を維持したままの移行が可能となる。
会場では、Hyper-V 2.0上で動作する動画配信サーバをライブマイグレーションするデモを実施。移行が行なわれても、親パーティション上で再生中の動画が途絶えることはなかった。また、連続してpingを行なっていたが、要求がタイムアウトしたのは1回だけだった。
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