ストレージの仮想化
ストレージの仮想化は、おもに「ハードディスクを効率よく利用する」という目的で用いられる。ファイル共有によるディスクスペースの共有や、複数ストレージをまとめたうえで必要に応じて領域を分配する、といった利用例が挙げられる。こうしたものにはDFS(Distributed File System)やLVM(Logical Volume Manager)といった技術が知られている。
DFSは分散ファイルシステムとも呼ばれ、複数のマシン上にある共有フォルダを1つのファイルツリーに接続して、あたかも1台のファイルサーバが動作しているように見せる方法である(図5)。ファイルを利用したいクライアントからは、いちいち別々のファイルサーバに接続する必要がなくなる。Windows ServerがDFSの機能を持っているほか、LinuxとSambaを組み合わせることで同様のDFSを実現することができる。
LVMは、ディスク管理機能の1つである。従来のファイルシステムでは、1パーティション=1ファイルシステムで固定されており、容量の変更などを自由に行なえなかった。しかし、LVMでは複数の物理ハードディスクもしくはパーティションをグループ化して、グループ内の合計ディスク容量から自由に論理ボリュームを作成することが可能である(図6)。論理ボリュームは、システムからは通常のパーティションとして扱うことができる。後からグループに物理ハードディスクを追加したり、論理ボリュームのサイズを変更したりすることも可能であるため、柔軟にパーティションを構成することができる。
仮想化のデメリット
さて残念ながら、仮想化導入はメリット尽くしというわけではない。場合によっては仮想化によるメリットを享受できず、導入前よりも悪化させてしまうこともあるので注意が必要である。ぜひ気を付けておきたいポイントを2つ紹介しよう。
1つは、仮想化レイヤの追加にともなってメンテナンスコストが増加する点である。仮想化によって機器を集約した場合、物理的な機器のメンテナンスコストは減るが、論理的な仮想デバイスのメンテナンスコストは増えることになる。たとえば、サーバ仮想化では、1つの物理サーバに複数の仮想サーバを配置するが、物理サーバがダウンすることが複数の仮想サーバのダウンにつながることから、監視管理を含めメンテナンスが重要な課題となる。
もう1つ、手法や製品によっては、パフォーマンスが低下する場合がある点である。物理ハードウェアが行なっていた役割をソフトウェアでエミュレーション(模擬化)するため、その処理のぶんだけオーバーヘッドが発生してしまうからだ。もちろん、旧機種からの移行時に仮想化された場合など、パフォーマンスが改善される場合もある。
次回は今流行のハイパーバイザ型仮想化ソフトについて解説する。
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